民族とネイション

ナショナリズムという難問

岩波新書

塩川伸明

2008年11月30日

岩波書店

902円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

地域紛争の頻発や排外主義の高まりの中で、「民族」「エスニシティ」「ネイション」「ナショナリズム」などの言葉が飛び交っている。だが、これらの意味や相互の関係は必ずしかも明確ではなく、しばしば混乱を招いている。国民国家の登場から冷戦後までの歴史をたどりながら、複雑な問題群を整理し、ナショナリズムにどう向き合うかを考える。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月21日

我が国と中国・韓国の間に交錯する歴史認識問題、今では誰もが民族主義者となってヒステリックに侮蔑の言葉を投げつけあっているようです。嫌な時代風潮だなぁと嘆きながらも、日本や日本人を褒め称えるテキストやテレビ番組には溜飲を下げている自分がいます。冷徹な眼で世界史を見つめることと、「民族」を1度しっかりと考えてみる必要を感じて本書を手にした次第です。 ナショナリズムは、国民国家の成立とともに生まれた思想、運動だったんですね。何故なら、国民国家が台頭する前の「前近代の帝国」は、広大な領土を支配し、その中には多種のエスニシティが住んでいましたが、統治の密度が低かったため、民衆はあまり国家と関係なしに生活しており、特定の支配民族の文化による統一が強行されることも基本的にはなかったからです 。国民国家の成立と軌を一にしたナショナリズムは、その出発点をフランス革命に見いだすことができます。ですから、ヨーロッパ及びその周辺に湧き上がった運動だったのですが、20世紀に至り、西欧列強の勢力が世界各地に波及する中で、植民地化の脅威にさらされた様々な地域で、自国の独立と「国民国家」を目指す運動が広く興隆したのでありました。そうした中で生まれたのが、諸民族がそれぞれ自己の運命を自ら決定すべきだと言う「自決」ないし「自己決定」の考え方でした。これを民族自決と言います。それが顕著に見られたのが中東欧諸国でした。 ドイツ、ハプスブルグ、オスマンの3帝国が第一次世界大戦の敗戦国となり、ロシア帝国が革命により瓦解したため、諸帝国に支配されていた諸民族の国家をいかにして作るかが問題となったのでした。こうしてバルカン半島が火薬庫と化したのでした。また第二次大戦後は、ユーゴスラビア、中国、ベトナム、北朝鮮、キューバなどの諸国が社会主義とナショナリズムの結合を基礎に成立しました。 そして、現代。著者は現代を切り分ける道具としてのキーワードにグローバル化・ボーダーレス化と冷戦終了を取り上げています。国境越えるヒト・モノ・カネ・情報等々の移動の飛躍的増大は、国境の意味を絶対的なものでなくしつつあります。つまり、現代にあっては国民国家の意義が大きく低下しているとも言えるのです。また、冷戦に勝利したアメリカは、唯一の超大国として新たな帝国を形作りました。これは反米主義的ナショナリズムの温床となりかねません。 さて、このようにナショナリズムを歴史的経緯の中で見てくると、自己決定、国民主権、民主主義、民族解放と結びつけて肯定的な評価がある反面、排他的、独善的、狂信的、好戦的等々の言葉と結びつけて否定的評価もありました。近年では、どちらかといえば否定的評価が大勢でしたが、ここ最近の日本では右派ナショナリズムが高まり、危険な空気に危惧の念を抱いている人も多いのではないでしょうか。 愛国心が健全な範囲に止まっている内は歓迎すべきですが、危険水域に近づく事があってはなりません。何を持って危険かといえば、それは紛争です。暴力を伴う紛争に発展する前に絶対阻止しなくてはなりません。中国や韓国の反日と嫌中・嫌韓、歩み寄ろうとしない中国、韓国そして我が国の指導者に危険な匂いを感じます。リベラルなナショナリズムを探る道があっても良いと思われます。

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