成熟社会の経済学

長期不況をどう克服するか

岩波新書

小野善康

2012年1月20日

岩波書店

858円(税込)

ビジネス・経済・就職 / 新書

需要が慢性的に不足して生産力が余り、それが失業を生み続ける現在の日本経済。これまでの経済政策はどこが問題なのか。新しい危機にはいかに対応すべきなのか。新古典派経済学の欺瞞をあばき、ケインズ経済学の限界を打破する、画期的な新しい経済学のススメ。閉塞状況を乗り越え、楽しく安全で豊かな国へと変貌するための処方箋。

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Readeeユーザー

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3.4 2018年01月27日

とにかく、我々一般人の常識を覆す言説がポンポン出てくるんですから、面喰らってしまいます。 例えば現在、金融政策としてその成果に期待が寄せられる金融緩和、インフレターゲット論については、言下に否定しています。 著者によると日銀は80年代末期以降、貨幣量をすでに2倍から3倍にしていますが、物価も国内総生産もまったく上がっていない事実から金融緩和には効果がないと考えられます。なぜ、貨幣量が増えても需要が増えないのでしょうか。こういう状態を、経済学者は「流動性のわな」と呼んできました。普通、流動性のわなは、利子率が高すぎて投資コストが高くなり、投資需要が抑えられているときに生ずると考えられています。しかし、成熟社会においては、お金に対する人々の所有欲が強すぎて消費需要が抑えられています。こういう状態では、貨幣の発行量が増えてもその貨幣は消費には回されず、ただ保有されるだけに終わってしまいます。インフレ・ターゲット政策もうまくいかないでしょう。この政策は、次のような考えに基づいています。インフレが予想されるとき、人びとは早めに消費した方が得だと考える、つまり将来貨幣の価値が低下すると予想します。だから、政策的にデフレを抑え、インフレにすれば、消費を刺激できる、これがインフレ・ターゲット政策の論理です。問題は、金融緩和でインフレを誘導することができるのか、です。すでにバブル崩壊以降、金融緩和で貨幣量は大幅に増えているのに、インフレになっていません。さらに日銀の国債引き受けで貨幣を増やしても、結果は同じです。国債は、将来の税負担となって、国民の上にのしかかってきます。つまり、国民の純資産はまったく増えていないので、効果が無いのです。どうですか、明解ですね。 また、かつて小渕首相は世界一の借金王と称して積極的に財政出動しましたが、景気浮揚に成果はありませんでした。そこで公共事業には、ケインズ主義者が述べるような効果がないとなれば、無駄な公共事業は仕分けして、やめてしまうのがよいのでしょうか。著者の考えている成熟社会の経済学の観点からすると、仕分けほど不況対策として間違っている政策はほかにないといいます。理由は、仕分けするということは、それに関係する仕事をしていた人を失業させるということです。当然、その人たちの所得は小さくなります。それゆえ、仕分けすれば、ただでさえ需要不足のところ、ますます国民経済全体の総需要が小さくなります。ですから、仕分けは、自分で自分の首を絞めることになるのです。 では、どうしたら良いのか、それは本書を読んで一人ひとりが判断することでしょうね。私は、新たな需要を求めて植民地経営に乗り出す帝国主義や、武力で略奪できる植民地がなくなると、国内の貧困層をターゲットに金融工学を駆使してサブプライムローンという名のフロンティアを創り出してきた資本主義は、新たな局面に在ると認識していますので、本書の主張には基本的に賛成です。  

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