
江戸問答
岩波新書 新赤版 1863
田中 優子 / 松岡 正剛
2021年1月22日
岩波書店
1,100円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
江戸問答とは、江戸の社会文化から今に響きうる問いを立てることである。近世から近代への転換期に何が分断され、放置されたのか。面影、浮世、サムライ、いきをめぐる、時間・場を超越した問答から、「日本の自画像」を改めて問い直す。誇りたい日本、変えたい日本、語り継ぎたい日本がここにある。『日本問答』に続く、第二弾。 1 面影問答 コロナの令和/改元はチャンスだった/日本の面影はそれぞれのなかに/江戸をどうふりさけ見るか/面影を追求した作家たち/様子をうかがう文化知覚距離/平時のなかのリスクマネジメント/「商品」が循環する社会/「界」と「隈」のデュアルスタンダード/祈りの場所は家のなか/融通無碍な江戸の信仰/一本の木のある風景/郊外の風景への憧れ/プレモダンの矛盾と葛藤/「分」から「類」への変化/「哀しみ型」と「博覧会型」/ジャーナル都市とデリバリー都市/江戸の多重性の秘密/俳諧文化と付句の愉しみ 2 浮世問答 学問のオタク化と多様化/競争はないが評判はある/江戸文明論になぜならない?/江戸研究に足りないもの/自由な学びのダイナミズム/文人たちのネットワーク/地方の私塾が近代を拓いた/「座」と「講」と「連」と「社」/貴族も武士も町人も歌に遊ぶ/経済の基準も一つじゃない/土地の権利と暦の権利/華は表に、蘭は裏に/日本の買い物フィルター/秋田蘭画のリアリズム/浮世絵はどこから生まれたか 3 サムライ問答 内村、新渡戸、天心が書かなかったこと/近代日本人の宗教観/西郷隆盛をどう評価するか/「湯武放伐」をめぐって/中国・朝鮮・琉球・日本の関係/武士道という理想像/岡倉天心がなしえた日本論/リアル武士は政策論者/幕藩体制の仕組みと矛盾/武士と農民と被差別民/明末清初と徳川幕府/サムライの気持ち 4 いき問答 日本人のエロス/現実ばなれする色っぽさ/サムライ・ファッションの不思議/ファッションとしての江戸/風物詩としての洗い髪/江戸の粋いき、関西の粋すい/九鬼周造が見つめた苦界/心もとなさ、やるせなさ/樋口一葉ーー壊れつつあるものを描く/存在のおぼつかなさ/近代文学は江戸を継承したか/私ごとばかりの随筆文学/モードとしての日本語/江戸を捨てて成立した日本?/これからやるべきこと あとがき1 新たな江戸文明の語り方へ……………田中優子 あとがき2 訂正と保留をこえて……………松岡正剛
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(無題)
日本問答に引き続く江戸問答。江戸と言えば田中優子の専門分野である。そして、日本人が大好きな時代小説の舞台でもある。どんな問答が展開されるやら、楽しみである。 本書では面影、浮世、サムライ、いきをキーワードに、江戸社会や江戸文化を見つめることで、近代以降に日本が失ったものを明らかにしようとしている。ところでこの章立ての標題、全てが漢字由来ではない。つまり、日本人の中の漢心(からごころ)を排したところから、日本人本来の精神性を見つめ直そうとの趣旨である。江戸時代の人々には漢心と大和心、せいぜいが蘭心が少しばかり入り込んでいた程度だったろうが、現代の私たちの心は洋ごころに大部分が占領されているだけに、余計見えにくくなっている。伊達や粋、お侠に最大の価値を置く生き方なんて、カッコ良いとは思うが、現実にはヤッパリお金だなぁ、と思ってしまうのが、現代人だ。 それにしても、本書は難解だ。さすが博覧強記で名高い松岡正剛のことだけはある。セイゴーさん、少しは読者の事も考えてね。
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