ふくわらい

西加奈子

2012年8月31日

朝日新聞出版

1,650円(税込)

小説・エッセイ

マルキ・ド・サドをもじって名づけられた、書籍編集者の鳴木戸定。25歳。唯一の趣味は、暗闇でのひとり遊びー。

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ひさだかおり

書店員@精文館書店中島新町店

(無題)

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2020年01月16日

みんなのレビュー (2)

Readeeユーザー

自分を自分たらしめるものは

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3.9 2018年12月15日

自分を自分たらしめるものは、顔であったり、文章であったりプロレスであったり。目に見えるものもあるし、目に見えないものもある。たとえ先端だけでも、それがすべてではなくても、自分である。 だから、「これは本当の自分ではない」と言い訳しながら好きではないことをするのではなく、好きなことをしよう。

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Readeeユーザー

(無題)

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2.6 2018年01月27日

この小説は何について書いているのかを考えながら読み進めましたが、一向に理解することができませんでした。作中人物にプロレスラーにしてエッセイストたる守口廃尊がいます。彼は本編の主人公である鳴木戸定と面会中にゲシュタルト崩壊を起こして言葉の意味が分からなくなってしまいます。そうなんです、ゲシュタルト崩壊をキーワードにすると、本作が何を描こうとしているかが見えてきます。ゲシュタルト崩壊によって自我の崩壊寸前の女性が、恋することによって健全なる自我を取り戻す物語なのです。 ゲシュタルト崩壊とは、全体性を持ったまとまりのある構造から全体性が失われ、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象をいいます。例えば人の顔は、眼、鼻、眉毛、口によって構成されますが、普通はこれらを一つのまとまりとして顔として認識します。ところが、ゲシュタルト崩壊を起こすと、顔を構するパーツに興味が向かってしまうのです。書名の「ふくわらい」の意味もこれで見えてきますね。 主人公の鳴木戸定は、4歳の頃から福笑いに異常なほどに興味を示します。既にゲシュタルト崩壊を起こしていたんですね。病弱だった母親を早くに亡くした定は、幼少から紀行作家である父親と世界中を旅行します。父親の関心は、専ら未開地にありました。カニバリズムの習慣のある部族と生活を共にした時には人肉を食べ、人肉が臭いものであることを経験しました。さらに取材旅行の最中に父は、定の目の前でワニに襲われて死にました。定は父親に安寧な来世を約束する為に、父親の肉も食べました。このように数奇な経験をしながらも定は、子供の心のままに成長しました。 25歳と成った今では、大手出版社で書籍編集者をしています。しかし、定は喜怒哀楽を表に表すこともなく、周囲からはロボットと評されています。また、身体を清潔に保ったり、食事を楽しむといった普通の人の生活とはかけ離れた世界で生きています。そして、そのことに全く違和感を感じていないのです。そんな定の前に現れたのが、盲目のイタリア人ハーフです。この青年、ラテンの国民性を発揮して、果敢に定にアタックします。定はいつの間にか、顔に豊かな表情が現れていることに気がつきます。 まあ、こう言った内容なのですが、面白かったかと問われれば、正直な所、全然と答えざるを得ません。最後のハッピーエンドまでを読み終わって、安堵感につつまれたかといえば、そんなこともありません。主人公のこれからにエールを送りたくなったかと言えば、そんなこともありません。つまり、読後に感動や共感あるいは衝撃といったものを伴いません。ですからこの作品は・・・。

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