スター

朝井リョウ

2020年10月7日

朝日新聞出版

1,760円(税込)

小説・エッセイ

国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。新時代の「スター」は誰だ。作家生活10周年記念作品〔白版〕「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応ーー作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。

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ひさだかおり

書店員@精文館書店中島新町店

「学生から就職」の夢と現実と葛藤という流れは朝井リョウらしくリアル。

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2
2020年10月08日

みんなのレビュー (6)

onochin

これも多様性の一種かな

starstarstar 3.0 2023年12月19日

作者が言いたかったのは、最後の千紗の新メニューのところかしら? なかなか難しい話だったけどそういう事かな?

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2023年10月15日

なるほどなと思った

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menchu

(無題)

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3.8 2022年10月15日

スター 朝井リョウ 感覚で撮りたい映像を撮る鉱と、細部まで考え尽くして撮る尚吾。2人は映画サークルで出会い、共同で監督をした作品で賞をとる。どちらが先に有名監督になれるか、そんなことを話しながら大学卒業した2人。尚吾は映画界巨匠の監督に弟子入りし、鉱は紆余曲折ありYouTube動画の撮影、編集に携わる。そんな2人のエピソードが交互に描かれ少しずつ交わる作品。 本書で心に残った2点について以下に示す。 1点目は「問いを与える作品、答えを与える作品」という表現である。最近では自分の意見を明確に示す、「答えを与える」作品が人気であるようなきがする。ただ、朝井リョウの作品は「問いを与える」ことが多く、深く考えさせられる。答えを与えてくれる偉大な人物の本だけではなく、問いを与えて考えさせてくれる人の作品も読まなければならないと感じた。 2点目は「価値観においては、大は小を兼ねるということは無い。ピラミッドの上に居ると思っても、実際はそれは点であり、三角形を、包括しておらず様々な点の集合体である」というメッセージ。本はYouTubeより優れている。勉学はゲームより優れている。こういった意識は自分の中にどこかある。しかし実際には、価値観に上も下もなく、それらは人それぞれなのである。その人に合わせた価値観を肯定し、見下さないことが重要である。また与える側になる際には、その人の価値観を見極め、求めるものを的確に与えることが重要である。

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2021年08月15日

スター 大土井紘 おおどいこう 立原尚吾 たちはらしょうご ◯泉と紘の会話 p108 「実際、新聞って、俺ら世代だーれも読んでないですよね。でも尚吾さんには、新聞に載ってこそ本物っていう物差しがあるんですよね、未だに」  零れ落ちた泉の声が、電車の床をバウンドする。その軌跡を視線で追いながら、紘は、電車内にいる客がほぼ全員、スマホを操っていることに気づく。 「俺、いいことだと思うんですよ。動画投稿とかするときの、とりあえずクオリティ気にせず世に出しちゃえって感覚。百点まで質を高めてから、っていうほうが無理ですもん」  隣から泉の声が聞こえてくる。 「まあ、Youtubeは無料だから、多少低クオリティのものでも許されるかもしれないけど」紘はさりげなく、すべての意見を受け入れているわけではない姿勢を示す。「映画はそうはいかないだろ。尚吾がこの場にいたら、そんな質の低いものにお金を払ってもらうわけにはいかない、って怒りそう」  はは、と紘が笑っても、泉は笑わない。 「でも、今、消費者が対価として支払ってるのって多分、お金じゃなくて時間ですよ」   紘は、目の前の光景が少し色を変えたような気がした。それまでは乗客がみんなスマホの画面を眺めているように見えていたが、突然、移動時間という対価をスマホに向かって注いでいるように見えた。それは、世界が手を組んで、泉の発言を肯定しているような感覚だった。 「だから、本気の作品とかってちょっと重いんですよね。意識をぐっと集中させる二時間三時間っていうより、日常生活の中にある隙間時間、家事してる間とか電車乗ってる間とかそういうちょっとした時間を何かに注ぎたいんですよ。尚吾さんはとにかくクオリティを気にしてましたけど、そういうときってそもそも受け手がクオリティとかあんまり気にしてなかったりするんですよね。どうでもいい時間を潰すのに丁度いいものが欲されてるっていうか」 ◯占部さんと尚吾の会話 p128  「俺たちは、世に出られるハードルが高くて、だからこそ高品質である可能性も高くて、そのためには有料で提供するしかなくて、ゆえに拡散もされにくい。大土井君は、世に出られるハードルが低くて、つまり低品質の可能性も高くて、だけど無料で提供できるから、ガンガン世の中に拡散されていく」 p133 占部さんと尚吾の会話 「皆がバラバラのもの追うようになって、本当は興味関心なんて人によって違うっていう当たり前のことがやっとちゃんとバレてきて……そうなると、人の生死を扱う作品の映像化がどんどん成立するのもわかるなって思う。キャストにとってもイメージいいし、共感できないイコール面白くない、みたいな層からの不評はあらかじめ省けるし」 ◯正月に会社で脚本を書く尚吾 お酒を飲む浅沼さん p189  ものを創る仕事をしていれば、誰だって、その人の活躍を目にした途端、全身の骨が溶解して元の姿に戻れなくなるくらい自分自身を保てなくなるような人が、いる。 p192 「私が鐘ヶ江監督の映画を好きになったのって、答えじゃなくて問いをくれるからなのね」 浅沼は、初めて行く街を初めて乗る車で運転するような速度で話し続ける。 「別に、いいこと言ってるう〜!ってなるから鐘ヶ江作品を好きになったわけじゃないっていうか。勿論今は、鐘ヶ江さんのこと人として好きだし尊敬してるけど、初めに何作か観たときは鐘ヶ江さん本人のことなんて全然関係なくて、なんか、観終わった後に、自分にとって大切なものって何だろうとか、いま一番会いたい人って誰だろうとか、なんかそういう問いみたいなのが頭に残る感じがしたの。今の時代の生き方はこれ、みたいな答えを言いたがる人って多いけど、鐘ヶ江作品って、私は答えを知りたいっていうより自分で考えたい人間なんだって気づかせてくれたっていうか」 (中略) 「時代を反映してるかとか、多様性やマイノリティに理解があるかとか、そもそもそういう観点でジャッジする気も起きないっていう感じ。ていうか、最新の価値観を反映してるからって映画としてクオリティが高いわけでもないしさ。そもそも、一作で多様性描こうとしてる人多すぎじゃない?多様性って一人でやるもんでも一作でやるもんでもなくてさ、同時代に色んな人がいて色んな作品があること、じゃん。色んな極端が同時にあるっていう状態が”多様性”なわけで、私たちは一つの極端でしかないわけじゃん。そんなの当たり前だったはずなのに、そこがごちゃ混ぜになってる感じない?今って」 p194 「でも、答えって答えとして差し出されても意味ないんだよね。私は答えより問いが欲しい。シロでもクロでもなくて、グレーを描けるのがフィクションじゃん。だけどあんたも天堂奈緒も、なんか、答えを持ってる人間に思われようとしてる気がする。それって逆に、こっちからすると何かが足りない感じがする」 ◯宇井野さんと紘の会話 p221 「俺たちがテレビを通して観てるものって、結局、文脈とか関係性なわけだから」 (中略) 「例えばさ、海外で無茶なことやらされる芸能人Aのコーナーがあるだろ。何でもいいよ、裸踊りとか現地のヤバいもの食わされるとか」  でも、と、宇井野は一度、言葉を切る。 「俺たちが観て笑ってるのは、多分、芸能人Aの言動そのものじゃないんだよ。そのVTRをスタジオで観てる芸能人Bとの関係性とか、そういうものをひっくるめて観てるんだよ」 p222 「Youtubeの動画なんて何が面白いんだって言う人未だにいるけどさ、その人たちは単純にそのYoutuberのこと知らないだけなんだよな。Youtuberも芸能人も、やってる企画は大して変わらない。出演者と視聴者の関係性が成立してるのが、今のところテレビのほうが多いってだけ」 ◯紘とMOVE社長・岩角の会話 p279 「ものを創って世に送り出すって、結局、心の問題なんじゃないのかって」  岩角が「心の問題」と繰り返す。その目線は動かない。 「作品を受け取ると、人の心は動きます。プラスの方向でもマイナスの方向でも、大きくても小さくても、少なからず何かしら動きます」 ◯尚吾と鐘ヶ江の会話 p299 「待つ。ただそれだけのことが、俺たちは、どんどん下手になっている」 尚吾の赤面に構うことなく、鐘ヶ江は話し続ける。 「いつでもどこでも作品を楽しめる環境が浸透して、受け手は次の新作を待てなくなって、作り手も自分の心や感性を把握する過程を待てなくなって、作品を世に放ったところですぐに結果が出ないと不安になって……どんどん待てないものが増えていく。客足、リターン、適した公開時期、そのうち」 鐘ヶ江が唾を飲み込む。 「最終的に、自分を待てなくなる。すぐに評価されない自分自信を信じてあげられなくなって、作品の中身以外のところで認められようとし始める」 ◯泉、尚吾、紘の会話 p328 「何か特別なことができるわけじゃない人間が、日々の発信の積み重ねで知名度と影響力を得ていく。ある人にとっては無名の人間が、ある人にとっては唯一無二のスターになる。そういうことが普通の時代になりました。能力を持つ者がスターとして君臨することだけじゃなく、持たざる者が持ちゆく過程を世に公開し支持を集めることができる。お金を生むこともできる。そんな時代になりました。誰にとってもスターなわけじゃないけど、誰かにとっての小さな星がファンクラブ的な閉鎖空間を設ければ、その中で光り続けられるようになりました」 ◯尚吾と千紗の会話 p363 「頭を過ったのは、完全食を食べてるときの尚吾の顔だった。そうしたら、私は人を騙すんじゃない、”今はそれに騙されていたい”っていう人の心を満たすんだって、そう考えられるようになった」 p371 「勝手に、そのジャンルで最高峰の場所で学ぶ自分は、そのジャンル全体の欲求を満たせるはずだって思い込んでた。でも私が満たしてあげられるのは、たとえ本当に最高峰の場所にいるとしても、そのジャンルの一点だけ。ピラミッドの中の一点を塗り潰す技術を学んだだけなのに、そこは頂点で、頂点を塗れる自分はそのピラミッド全部を塗り潰せるつもりでいた」

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Readeeユーザー

自己投影

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3.3 2021年04月12日

"ないものをあるように、 あるものをないように。" 動画の配信方法を題材として扱っていたが 総じて作者の『創作』への葛藤が窺える。 同じゆとり世代、平成生まれ。 時代に対して感じることも視座も近い。 わかりみがふかい。 もやっとしてることを表現してくれている。 特別、クリエイティブな仕事をしてなくとも ヒト・モノ・カネが交わる世界と対峙する人なら 誰しも一度は悩む問題なんじゃなかろうか。 "中身よりも状態を整えたほうが手っ取り早くリターンを得られる、問いよりも答えを持っているほうが状態が整って見える" "おかしな等号だらけの世界に対して、自分はどういう判断基準を持つのか" 他にもたくさんの登場人物たちのセリフから 何かについて考えさせることが多い小説。

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3.1 2021年04月04日

朝井リョウも作家デビーしてから10年になるのだそうだ。その間、直木賞も受賞しているのだから、もうれっきとした中堅作家だ。直木賞の受賞作『何者』はSNSをモチーフにしていたが、本作はYouTuberである。単に時代の先端を追っているばかりではないのだ。そこには創造とは何かとの真摯な問いかけがあり、それに対する葛藤があるのだった。 それが作者自身の葛藤である事は間違いないのだが、作者は映像の世界を借りてそれを表現している。新人監督の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した二人の青年・尚吾と絋が主人公。職人肌でコツコツと細部を積み重ねて作品を創り上げていく尚吾。一方の絋はといえば、感性の赴くままに撮った映像がそのままで完成度の高さを誇る天才肌である。そんな対照的な二人が共同監督した作品が評価されたのだ。それは、ライバルとしてのスタートでもあった。二人の手法の違いは、その後の生き方の違いへと現れるのであった。大学卒業後、キャリアを積むべく名監督への弟子入りをした尚吾と、行き当たりばったりでYouTubeに表現の場を見出した紘。運命の女神はどんな振る舞いをするのであろうか。

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