ネクロポリス（上）

世界のどこかにある、懐かしい故人と再開できる場所「アナザー・ヒル」。ヒガンと呼ばれる11月から冬の間だけ行われる祝祭の期間にだけ、入山許可証を手に入れることができた人間だけがアナザーヒルに船で訪れることができる。 入り口には日本の大きな朱色の鳥居にヒガンという期間の概念、街の雰囲気や紅茶好きはイギリス、祝祭の雰囲気はメキシコの死者のお祭りのようだけれども、どれとも違うこの世界。死者は実在し普通の人と何ら変わらない。知らない人から見たら、親しい人がおしゃべりに興じてるようにしか見えないだろう。 死者はアナザーヒルにずっといられるわけではなく、その先の死の世界への通過地点がアナザーヒルなのだ。だから人々は親しい人が亡くなると、死者の国に行ってしまう前にヒガンに参加する。死者と生きている人の境目がない習慣に最初はびっくりするだろう。死は悲しむものではないというのにも。 死は悲しいものなのか自分にはまだわからない。死んだ人に会いたいなぁとたまに思うことはあるけれど、近くにいるような気もするしなんだかそれで満足してしまってる。 おじいちゃんのお葬式で泣くよりも、こんなに大勢の人がいるのに本当におじいちゃんに会いたくて会いたくてたまらないという人は数えるほどだったのに驚き、温度差を嫌というほど感じたのを覚えてますね。いったい何の義理でこの人たちは参加してるのだろう?不思議だったんです。 当のおばあちゃんもそうだったみたいで、自分が死んだときはほんとに親しい人だけで参加したいと思う人だけで密葬にして、費用かけずに皆で食事したり楽しんで欲しいと、この前伝言を頼まれました。お葬式なんて結局生きてる人の自己満足や見栄でしかないのよ、お骨はほんの少しずつ賑やかな楽しい場所に撒いといて、そしたら死んでも遊びに行けるでしょう?って。アクティビティなおばあちゃんらしくていいな、でも果たして法律的に大丈夫なのからんと思案顔で思ってたら、だからバレないようにちょっとだけ撒くのよと。あと二十年は生きそうで元気だから笑ってそういう話をしましたね(笑) きっとおばあちゃんが亡くなったときも私は泣かないだろうと思います。楽しい思い出をずっと覚えておきたいから、自分の中では楽しく笑ってるおばあちゃんでずっといてほしいから。 だから泣くよりも、おばあちゃんと過ごした楽しい時間がどんなふうだったかを伝えたい。おばあちゃんがどんなことが好きでどんなことが楽しいと思ってくれていたか。きっと息子のパパは知らないだろうおばあちゃんの一面を伝えたいと思っている。それが私の努めだ。

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