極北クレイマー(下)
朝日文庫
海堂尊
2011年3月31日
朝日新聞出版
528円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
財政難の極北市民病院で孤軍奮闘する非常勤外科医・今中。妊産婦死亡を医療ミスとする女性ジャーナリストが動き出すなか、極北市長が倒れ、病院は閉鎖の危機に瀕しー。はたして今中は極北市民病院を救えるのか?崩壊した地域医療に未来はあるのか。
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(無題)
病院の改善を図るべく、室町院長は日本医療業務機能評価機構の評価を受けようと言い出したのでした。室町の狙いはもしも高い格付けが取れれば良し、そうでなくともこれを契機に病院の改善を図ろうというものでした。評価機構から送り込まれたサーベイヤー武田多聞や布崎夕奈には、傲慢な振る舞いばかりが目立つのでした。彼らには、莫大な費用がかかるばかりで、評価に実質的な益は見当たら無いと見切った今中は、平松らに泣きつかれた事もあって彼らを早々に追い返してしまうのでした。 医療ジャーナリスト西園寺さやかは、遺族である消防士広崎宏明の名前で病院と市役所にそれぞれ損害賠償の訴えを起こすことを通知する文書を送りつけたのでした。病院は不幸な事故であることを一貫して主張しましたが、問題を大きくしたくない市役所は病院に無断で、三枝の事件は医療事故であることを認める報告書をでっちあげ、広崎に示談金を握らせようとしたのでした。これには、中央への復権を目指す極北署の木村署長を焚きつけると同時に、極北地検の漆間検事正にも働きかけ、三枝の事件を刑事事件として立件させようとする西園寺の暗躍があったのです。 三枝の逮捕により閑古鳥の鳴くようになった病院に乗り込んできた福山市長は職員を集めると、病院の閉鎖を告げました。市役所からの出向でありながら、自らの身も解雇と知った平松は福山市長に叛旗を翻すのでした。市の不正を暴き立てる平松の言葉に激昂した福山市長は心筋梗塞の発作を起こし、福山の隠し子で不良研修医後藤継夫が看取るなか、亡くなってしまうのでした。 最後にチョット気になったことがありましたので、記しておきます。それは方言についてです。赤鼻の加藤課長は、典型的な市役所叩き上げとして北海道弁丸出しに描かれていますが、この人の言葉は北海道弁ではありません。東北のどこかの方言を思い起こします。第一沖縄ではあるまいし「本土」などとは誰一人として言いません。もしそれを言うんなら「内地」です。浅田次郎は登場人物に北海道弁も南部弁も上手に使わせています。いい加減な取材は、作品を薄っぺらな偽物にしていまいます。
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