雪国
角川文庫
川端 康成
2013年6月21日
KADOKAWA
398円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
無為徒食の男、島村は、駒子に会うために雪国の温泉場を再訪した。駒子はいいなずけと噂される好きでもない男の療養費のために芸者をしている。初夏の一夜以来、久々に会えた島村に駒子は一途な情熱を注ぐが、島村にとって駒子はあくまで芸者。島村は雪国への汽車で会った女、葉子にも興味を抱いていて…。「無為の孤独」を非情に守る男と、男に思いを寄せる女の純情。人生の悲哀を描いた著者中期の代表作。
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むるそー
(無題)
「駒子の愛情は彼に向けられたものであるにもかかわらず、それを美しい徒労であるかのように思う彼自身の虚しさがあって、けれども反ってそれにつれて、駒子の生きようとしている命が裸の肌のように触れて来もするのだった。彼は駒子を哀れみながら、自らを哀れんだ。」 「そう言って、気のゆるみか、少し濡れた目で彼を見上げた葉子に、島村は奇怪な魅力を感じると、どうしてか反って、駒子に対する愛情が荒々しく燃えて来るようであった。為体の知れない娘と駈落ちのように帰ってしまうことは、駒子への激しい謝罪の方法であるかとも思われた。またなにかしら刑罰のようであった。」 雪国の温泉旅館に通う主人公の藤村と、駒子・葉子という二人の女性を描く。駒子は藤村に深い恋慕を抱いていて、それは藤村も理解しているのだが、藤村には駒子とどうこうなろうという気はない。これは駒子を愛していないから、というわけではない。その描写が上記した文の引用であり、この複雑な心情の機微がこの物語の一番の魅力なのだと思う。 葉子はどこかミステリアスな女性として描かれており、感情を表に出す駒子とは対照的だ。藤村は葉子にも惹かれているのだが、それは駒子に対しての感情とは全く別物であり、むしろ葉子を通じて駒子を見ている、とまで言えるのかも知れない。これは二つ目の引用で描いている。 藤村の心情は、理解不能なようでとても共感できる。彼の達観した諦念のようなものが、上品に心に響いた。
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