ピンクとグレー
角川文庫
加藤 シゲアキ
2014年2月28日
KADOKAWA
616円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまうが…。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの2人の青年の愛と孤独を鮮やかに描いた、切ない青春小説。
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りばちゃんとごっち
【スタンドバイミー】 大阪から転校してきた僕。 親の都合で転校が多い、友達はもう作らんと決めていた。 東京みたいな場所をしょーもないって言うねん。 なのに、 初めて会ったこの日から鈴木慎吾と大木と石川はあまりにも自然に僕との距離を縮めてきた。 そしていつしか僕は全ての反抗を諦めていた。 シュー・・・・しゅるるるる・・・じゅっ ぐぅぁ ぐぁ 転校したあの日から、僕らは毎日一緒にいた。 僕の名前は河田大貴。河のリバーからとって「りばちゃん」。 鈴木慎吾は、「ごっち」だ。 本当にいつも一緒にいたんだ。 中学、高校、大学。 それがいつまでも続くと思ってた。 ふたりでバンドを組んでギターとボーカルで。 高校のときモデルにスカウトされて。 雑誌のモデルとかエキストラとかしながら、大学も行って。 あるときエキストラのバイトに行ったときに、ごっちがアドリブを言ったそれが監督の目に留まって、あれよあれよという間に、ごっちは、鈴木慎吾から白木連吾になった。ドラマの主演を張り、CMの撮影、雑誌のインタビュー、どんな仕事でもやる、時の人だった。 やらないなんてないから。 僕はひとり取り残された。 いつまでも続くと思っていた時間は、もう戻ってこなかった。 彼は向こう側の人間になってしまった。 その時僕はまだモデルやエキストラをつづけながら、細々と生きていた。 いつか自分の力で、ごっちの近くに行くことを目指して。 全部譲るよ、明日から、簡単だよ全部手に入るよ。 そう言って、突然彼はいなくなった。 世界がピンクからグレーに変わった瞬間だった。 なぜ彼が死ななければならなかったのか。 なぜ彼が死を選んだのか。 そして、なぜ彼は僕にそれを発見させたのか。 その時がきたのだ。美しく舞い落ちようと思う。 死なないなんてないから。 彼らしいのかもしれなかった。 やらないなんてないから。 何通もの遺書。 僕にしかわからない文章。 彼を彼でいさせるために、僕はできうる限りのことをした。 それで警察に捕まってもいいと思った。 彼の死をきっかけに僕は彼の献身的な親友という立場で芸能界で花咲いた。 いままでオーディションで散々僕を落としてきた監督も手のひらを返した。 これは僕の力じゃない。 ごっちの力だ。 ごっちを白木連吾を風化させてはいけない。 いつまでも誰もの心に輝かせたい。 僕はごっちになることにした。 彼と過ごした時間のすべてを、残すために。 ごっちは僕で。 僕はごっち。 どっちがピンクで、どっちがグレーか。
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(無題)
意外と面白かった。 ごっちの人生を追体験するようにりばちゃんは生きる。 序盤の慣れていなさや文の拙さで期待値は下がっていたが、そのぶん後半のプロットが非常に効果的だった。 村上春樹・伊坂幸太郎の系譜にある文章だが、伊坂ほど潔癖症ではない。ただし「こそあど言葉多すぎる問題。起伏がないところでは読みづらいと感じざるを得ない。 死はテーマ作りやすい。喪失、追悼追体験、重なる自分…。初書きということを考えると無理ない選択。へんにひねりを入れていなくて正解では。 残念なのはタイトルと章題。この微妙に内容と関係ないタイトルも伊坂仕様ですかそうですか(なんなら監修伊坂幸太郎なのでは…)。
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(無題)
ちょっと説明不足というか言葉足らずというかで分かりにくいトコロもあったけど、面白かった。
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