ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス
春名 幹男
2020年10月30日
KADOKAWA
2,640円(税込)
人文・思想・社会
「われわれがそれ(角栄潰し)をやった」。K長官が漏らした真意とは!? 「自主外交」で角栄はアメリカに潰された。 国際ジャーナリストが15年に及ぶ取材で掴んだ、数多くの決定的新事実!! 田中角栄はなぜ逮捕されたのか? その理由は「角栄の外交」に隠されていた。 アメリカは「日中国交正常化」などの「角栄の外交」をひどく嫌っていたのだ。 その後発覚した、戦後最悪の国際的疑獄となったロッキード事件。そこでアメリカ政府高官は、密かに角栄の訴追を可能にする「ある細工」をした。 外交の対立も、角栄訴追に関わる秘密も、米機密文書には記されていたが、日米の根幹に絡む『巨悪』の深い闇は文書が公開されず、解明されなかった。 本書は「陰謀説」の真偽を徹底検証し、初めて証拠を挙げて解明する! ロッキード事件の全容は、上記のように長らく解明されてこなかった。 結果、数多くの陰謀説が流布する事となる。「誤配説」、「ニクソンの陰謀」、「三木の陰謀」、「資源外交説」、「Kの陰謀」……。 米国立公文書館、ニクソン・フォード各大統領図書館、CIA、日本側資料、日米関係者らを取材・調査。 インテリジェンスの機微を知り尽くした国際ジャーナリストが15年に及ぶ取材から、初めて真の「巨悪」の正体を描き、巨悪の訴追が阻まれた理由に迫る!! なぜ、首相の犯罪は繰り返されるのか? その構造までが浮かび上がる巨弾ノンフィクションーー。 【目次】 まえがき 田中がアメリカに嫌われた真の理由を明らかにする/Tanaka文書の経緯を逐一追う/巨悪の正体/陰謀説の真贋 第一部 追い詰められる角栄 序 章 第一章 発覚の真相 第二章 三木の怨念と執念 第三章 ロッキード事件はなぜ浮上した 第四章 キッシンジャーの「秘密兵器」 第五章 角栄の運命を決めた日 第六章 L資料の秘密 第二部 なぜ田中を葬ったのか 序 章 第一章 日中国交正常化に困惑した米国 第二章 北方領土で米ソが密約 第三章 田中文書を渡した真意 第三部 巨悪の正体 序章 第一章 児玉の先に広がる闇 第二章 日米安保体制を揺るがす あとがき ロッキード事件年表 主要参考文献一覧
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toruo
(無題)
熟練の国際ジャーナリストがロッキード事件について15年かけて洗い直した作品。以下の大きく5つの陰謀説を中心に米国で公開されている資料にも丹念にあたってその真贋の検証を中心に展開されている。 1.ロッキード社の秘密資料(ピーナッツの領収書とか)が偶然誤って議会に配送されて事件が発覚した。 2.ニクソンが自分の意に沿わない田中角栄を嵌めた。 3.三木武夫が政敵である田中角栄を葬るために強引に追求を行った。 4.田中角栄が資源外交で米国から睨まれて嵌められた。 5.キッシンジャーが意に沿わない田中角栄を嵌めた。 こうして書くといくつか重なっているように見えるが…興味深かったのはこの米国そのもの、またはニクソンかキッシンジャーの虎の尾を踏んで嵌められた、というのは伝聞というか噂話をもっともらしく田原総一朗が広めたものらしくそれだけでも彼がジャーナリストを名乗る資格が無いことが分かる。実際にはニクソンやキッシンジャーが意に沿わない田中角栄を嫌っていたことは事実のようだがかなり厳しく対応を検討していて陰謀と言えるようなことではなかった、ということがよく分かる。当時経営不振に陥っていたロッキード社が地元にあるニクソンはロッキード社への融資に国の保証を無理矢理付けていた。なのでなんとしても倒産だけは避けたく販売不振の旅客機をなんとしても日本に売りたかった。つまり陰謀を巡らせるようなゆとりはなかった。また融資に保証をつけていた関係で議会はその経営をチェックする必要があり監査法人から正式に提出された資料に領収書などが含まれていた。キッシンジャー率いる外交筋は日米関係に亀裂が入るのを恐れて日本の政治家の名前が分かる資料を日本の司法当局に渡すことにむしろ難色を示していた。三木は強硬に資料の公開を迫ったがあくまで司法当局の者だけが見られる、という条件をつけられ強引な追求はできなかった、などなど面白おかしい陰謀説が次々と検証されていって本当はどういう事件で誰が一番悪かったのか、が暴かれていく。キッシンジャーがかなりとんでもない奴だということもよく分かるのだがそれを超える巨悪がいる、という展開でかなりのページ数も苦にならず読めてしまった。日本にもこういう時代あったんだな、としみじみ思わせられた。あっと驚く展開こそないけれども非常に面白い作品。おすすめです。
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