
光圀伝
冲方 丁
2012年8月31日
KADOKAWA
2,090円(税込)
小説・エッセイ
何故この世に歴史が必要なのか。生涯を賭した「大日本史」の編纂という大事業。大切な者の命を奪ってまでも突き進まねばならなかった、孤高の虎・水戸光圀の生き様に迫る。異才が放つ時代小説第二弾!
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(無題)
大著ですね。力作ですね。感動巨編との形容がピッタリですね。光圀と言えば誰もが思い浮かべるのは、水戸黄門漫遊記ですね。冲方が描くところの光圀が巷間伝わるところの黄門様とオーバーラップするのかどうか楽しみにしましょう。さて、本書天の章は、光國と名乗っていた青少年時代が描かれています。特に青年期の光國には、読んでいてワクワクさせられます。宮本武蔵との邂逅、沢庵和尚との出会い、どこまでが史実に沿っているのかわかりませんが、光國青年の人格形成に大きな影響を与えた巨人との触れ合いです。もう少し遡って少年時代には「3男の自分がなぜ水戸藩の世継ぎなのか」という疑問が常にありました。その思いは、長じて林羅山の次男読耕斎との問答で、儒教の義に反している自分を自覚し、不義の自分を矯正する生き方を模索するところとなりました。儒教的社会規範をベースにする当時のインテリとしては、当然の帰結と言えましょう。例えば、光圀の祖父家康は豊臣を滅ぼすにあたって、単に力づくではなく、理論武装して臨みました。この時、後押ししたのが林羅山の朱子学でした。だから光圀は、兄に藩政を還すことを義と考えたのでした。さらにそこから、天皇に国政を還す大政奉還を義とする重臣が出現したのが歴史の事実でした。 チョット先走り過ぎてしまいました。時を江戸幕府開闢にまで遡ります。家康は徳川家、幕府安泰を担保するために長子相続を制度化します。ところが早くも三代将軍家光の時代にこの定めは危機に瀕します。水戸徳川家では、3男光國が世子に定められたからです。光國自身がこの事で苦しみますが、何故そうなったか、その秘密が明らかになるには、光國の伯父尾張徳川義直の死を目前にした告白まで待たなければなりませんでした。そこで明かされたのは、父賴房の「将軍になりたい」との野望であり、家康の11男に産まれた賴房が望んでも得ることができない心の鬱積や意趣返しでありました。 天地人との章建てになっていますので、今度は地の章に進みます。この章にあって光國の夫人泰姫の存在感ほど、大きなものはありません。泰姫は関白左大臣・近衛信尋の娘でした。光圀との婚礼が挙行されたときに光国は27歳、泰姫は17歳でした。泰姫は和歌に優れ学識が高く、「天姿婉順」と評されました。天姿とは、生まれ持った姿、ひととなりのことを言います。婉順とは、しとやかですなおであることです。本書では泰姫の素直さは、常軌を逸したほどに描かれます。いわゆる「天然」ですね。そこが光國に愛されるわけです。義を貫こうとすれば、妻を娶り子を成すことができないと頑な光國は、泰姫に過去の自分と義に生きようとする心情を全て包み隠さずにうちあけます。泰姫は全てを受け入れて、そんな光國の生き方を肯定するのでした。光國にとって、穏やかで幸せに満ちた泰姫との時間を共有することができたのは、わずか4年間に過ぎませんでした。泰姫は21年の生涯を終えました。光圀が生涯の願業とする紀年体方式による日本修史の編纂を決意するのは、泰姫の精神的支援が決め手となったのです。こうして物語はいよいよ佳境に入って行きます。
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yamaura
(無題)
出身が近いので興味があり、読んでみた。 750pの大著のため、バランス良く持つのも一苦労…時間がかかった長かった。 破天荒、一方何より義を重んじる丈夫として、日本人に馴染みがある水戸黄門のイメージを一心してくれたのは良かった。ただの昔偉かったお爺ちゃんじゃなかったんだね。まぁそれも、生前の名君ぶりを元に、江戸後期作られたイメージみたいだけど。 水戸の二大英雄(もう1人は烈公。慶喜は賛否あるからね…)の1人の一生を追体験出来ることは、地元にとって価値ある本だと思う。 まぁでもやっぱ長いよね…一生だからしょうがないんだけど、人の生き死にの連続で物語が終わる。そりゃそうだけどちょっと取捨選択してくれても良かったのでは…宮本武蔵とか創作も入れるから余計に…
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