遙かなりわが愛を
角川文庫
笹沢左保
1989年6月30日
角川書店
501円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
180センチの長身を真白な背広に包み、淡いピンク色のワイシャツに黒ネクタイと、ひどく派手な装いだが、オシャレに徹したスマートさがある。短く刈り込んだ頭、浅黒く精悍なマスク、知的で愛嬌のある大きな目。これが38歳の警視庁名物警部、捜査一課主任伊勢波邦彦である。伊勢波に挑戦状が届いた。それは全国の警察本部防犯課長会議の席上で明らかにされたのであった。江戸の蘭学者高野長英の曾孫と称する元東国大助教授で殺人者、高野真一郎からのメッセージで、四国宇和島の旧家の人妻宗方美紗子殺害を予告するものだった。伊勢波は宇和島へ向った。宗方美紗子は楚々とした美人であったが、数日後、尾道で殺された。遺留品は、高野真一郎の犯行を物語っていた。しかし犯行時刻、真一郎のアリバイ証人は、なんと伊勢波自身であった。高野真一郎は途方もないことを企んでいる。伊勢波は慄然とした。
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