墓地を見おろす家
角川ホラー文庫
小池 真理子
1993年12月17日
KADOKAWA
616円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば…。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついにむかえた、最悪の事態とは…。復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー。
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kicha
ジャパニーズホラーの先駆者
都心、新築で陽当たり良好、 そして格安という申し分ないマンション。 しかし、唯一の難点は広大な墓地に囲まれていること。 そこに家族3人で移り住んできた主人公たちだったが、 引っ越してきた早々に飼っていた小鳥が不審死を遂げる。 言い様のない不安を抱えながらも日常生活を送るが、 よぎる不安を裏付けるようにその後も不吉な出来事が続く。 そして、相次いで引っ越していくマンションの住民たち… このマンション、、やっぱり何かがおかしい、、 肌にまとわりつくようなおぞましさ。 真綿で首を絞められたように じわじわと精神的に追い詰められていく恐怖… 今でさえ「リング」や「呪怨」を筆頭とする 数多くのジャパニーズホラー作品が世に出されており、 この手のたぐいの怖がらせ方に受け手も慣れてしまって むしろ古典的な程だと思ってしまうくらいだけど、 この作品が刊行されたのは1988年7月。 今から約31年前に発表されたことを鑑みると、 当時まだジャパニーズホラーというものが 確立されていない時に出された本作は、 めちゃくちゃ斬新で読者に衝撃を与えたのでないかと思います。 過去に夫婦の間に起こった出来事や地下開発の件。 そしてマンションの他の住民のことも少し書かれているので、 それが後々物語に関係してくるのかと思いきや、 伏線が全く回収されないまま幕を閉じます。 しかし、その全く説明の無いまま終わるところが不気味であり、 怖さが更に増す良いスパイスになっていると私は思います。 後半の怒濤の展開に賛否両論はあるけれど、 全体的なストーリーは今でも古さを感じさせない程面白いです。
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