
冷静と情熱のあいだ Blu
角川文庫
辻 仁成 / 角川書店装丁室
2001年9月21日
KADOKAWA
704円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
かつて恋人同士だった男女。恋人時代に交わしたたわいもない約束。本当に、その日、その場所に相手は来るのだろうか……男の視点を辻仁成、女の視点を江國香織が描く、究極の恋愛小説。
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(無題)
男は状況を的確に説明する能力に長け、女はその状況下で何をどう感じたかを表現する能力が高いとの思いを新たにさせられた作品であった。例えば須賀敦子は狭い運河の岸にぶつかる「タプン、タプン」の水音でベネツィアの路地の空気を一瞬に再現してみせた。江国香織にとって、2000年5月25日にあおいと順正が再会する場所はフィレンツェのドゥオーモでなければならなかった。なぜなら「恋人達にふさわしい場所」と思ったからだ。男性読者にとっては何とも不可解な女性心理の押し付けである。 そんな、理不尽さを解きほぐして納得と安心の心地よい場所へと導いてくれるのは、男性作家・辻仁成であった。何故フィレンツェでなければならなかったのか。辻は先ずミラノとフィレンツェの風土の違いから解き明かし始める。 言うまでもなく、ミラノはローマに次いでイタリア第二の都市である。ともに観光が重要な収入源であるのは共通するが、ローマが政都であるのに対してミラノは古くから商工業の中心地であった。優雅なイタリア車・アルファロメオはミラノに本社を置くし、何と言っても忘れてならないのは、ミラノモードである。ドゥオーモ広場とスカラ広場を結ぶ美しい十字型のアーケード・エマヌエーレ2世のガッレリア。観光客の誰もが踵を地面につけてクルッと回るあの一角、そこはプラダの本店が占める。そしてグッチやフェラガモ、さらにはジョルジョ・アルマーニやジャンニ・ベルサーチなどなどデザイナーズブランドは枚挙に暇がない。街で見かけるミラネーゼは、男であれば誰もが思わず振り返って見直すほどだ。つまり、この街は古いものと新しいものが同居しているのである。 これに対してフィレンツェは、街全体が美術館と称されるように、中世の佇まいの中にある。この街のベクトルは、何時も過去に向かっているのである。あおいと順正にとって、ドゥオーモで再会する約束は将来の事ではあったが、それは希望の無い未来であった。2人にとって、こんなに相応しい場所はなかったのである。 人は生まれ育った場所を故郷と呼ぶ。そしてこの言葉には特別な思い入れを込めるのが普通だ。それでは、生まれ育った場所が外国だったらどうなのだろう。あおいはミラノで生まれ育った。だから、自分の居場所をミラノとした。これに対して順正も同様にニューヨークを選んだかといえば、そうではなかった。学生時代をあおいと共に送った東京・世田谷であった。冷静で孤独が好きだったあおいがミラノを選び、情熱的で愛に満ちた自分でありたいと願う順正がトウキョウを選択したのは、何かを象徴しているような気がしてならない。
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Readeeユーザー
こっちの方がよい
江國香織のより、こっちの方が良かったな。特にイタリアを感じる風景や雰囲気、イタリア人が出てくる描写が良かったな。イタリアって、やっぱりいいな、と思った。
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