ジェノサイド
高野 和明
2011年3月31日
KADOKAWA
1,980円(税込)
小説・エッセイ
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
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(無題)
内戦の続くコンゴで発生した新種の生物には人類絶滅の危険性を孕んでいた。この新種の生物を抹殺するために送り込まれる傭兵のリーダーには難病で余命1ヵ月となる息子があった。 一方、日本で薬学を学ぶ学生古賀研人は急死した父の遺したソフトで、その難病の治療薬を開発することを命じられる。 新種生物を巡って、コンゴ、アメリカ、日本を舞台に、繰り広げられるサスペンス。 本書では、1994年に発生したルワンダ大虐殺が生々しく紹介されている。フツ族の政権が煽動したフツ族によるツチ族の抹殺。百日間という短期間に人口の一割、ツチ族と穏健派のフツ族、ツチ族とみなされた一般人、80万人以上が殺された。 その方法が凄まじい。殺害者の多くは隣人や同じ村の住人。棍棒と山刀による殺害。虐殺に参加しないものは虐殺される。殺害される前の略奪、性的攻撃、強姦、拷問。手足切断の拷問。その苦しむ様を囃し立てる。犠牲者に自身の配偶者や子供を殺すことを強いる。親子、兄弟間の強姦の強要、他の犠牲者の血肉を食らうことを強制。手榴弾で集団爆殺。焼殺。 これが人間の行為かとあまりの凄まじさに身の毛がよだつ。小説だろうと高をくくってはいけない。ルワンダ虐殺のこの叙述は事実として報告されているのだ。 何よりも、執筆にあたっての著者の取材が凄い。たくさんの一流の薬学研究者に会い、また創薬に関してだけでなく人類学、進化学、アメリカの戦争・諜報活動、戦史などなど多くの参考文献にあたっている。著者の勉強ぶりは相当なもので、それだけの蓄積の上に構築された物語である。 我々の祖先がネアンデルタール人と共存していた時期のこと。ネアンデルタール人の人骨が、無残にも大量虐殺された状況で発掘された事実は、人類性悪説を強固に補強してしまった。「人はなぜ殺し合うのか」。 本書はツチ族とフツ族の、無限に繰り返される殺しあいの他に、なぜか南京大虐殺もとりあげている。 もし我々人類よりも進化した種が誕生したら、我々は新人類にジェノサイドされてしまうのではないか、という仮説の元、アフリカの森林の中で、息もつかせぬアクションシーンが繰り広げられる。 研人を救うのは韓国人大学生で、先ほどの南京大虐殺の件と言い、作者は何か人種的にバイアスがかかっているのか、と勘ぐりたくなる。本書はステレオタイプの自虐史観が随所に述べられているので、抵抗感のある人は手に取らない方がよいだろう。 人類性悪説を裏付けるショッキングな資料の数々、そして、我々もいつかはジェノサイドされる立場に回るのではないかという恐怖感が畳み掛けてくる。読者のほとんどは、それらに徹底的に打ちのめされるだろう。様々な資料を丁寧に取材してエンターテイメントにまとめた点は、高く評価したい。
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sai。m(_ _)m
ハリウッドで映画化されてもええんちゃう?
まるで映画を観ているかのように、容易に映像が浮かんでくる描写。スリリングで息もつかせぬ展開。少しずつ紐解かれていく謎。 かなりのボリュームにもかかわらず、一気に読めた。 うん、楽しかった。
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