YOSHIKI／佳樹

日本が世界に誇る、いや、千葉県が生んだアメリカからの逆輸入スターとでも言うべきでしょうか。これほど無国籍な雰囲気を醸し出す日本人もいないのではないでしょうか？ YOSHIKIが放つミステリアスさはルイヴィトンやエルメスの様な一流ブランドと同じ様な効力を持ち、世界へと轟いて行きました。 ある時はエクスタシーレコードの社長として、またある時はXJAPANのドラマー、ピアニストとして、またある時は作曲家として楽曲を提供する。それが彼のミステリアスの原点であり、これらの創作活動がYOSHIKIをミステリアスにし続けているのかもしれません。 では、そんなミステリアスなYOSHIKIの半生とはいったいどんなドラマだったのか？ 本屋でこの自叙伝を見つけ、少し読みました。そして凄く面白いなと思い、少し読み耽りました。 と言うのも、YOSHIKIのアグレッシブなインディーズ時代や、ずっと謎のベールに包まれていた幼少期や学生時代を綴ったページはリアリティがあり読み応えがあり、それを更に読み進めたくて購入しました。 しかし、やっぱり自叙伝である以上インタヴュアーがYOSHIKIに質問し、YOSHIKIがそれに答える。 もしくはYOSHIKIが一人でラジオ番組を行っているかの様に、自分の半生をYOSHIKI一人が語っている文章を書くべきだったと思います。 この自叙伝にはそう言ったリアリティが全くない。 要所要所にはリアリティを感じても、全体を通じてリアリティがあるか？と言われたら全くない。 リアリティを感じるのはXJAPANがインディーズ時代から初の東京ドーム公演を終わらせるあたり迄。 それ以降は３流小説かの如く実際にはXのメンバーが本当に発したのかどうか疑わしいセリフのオンパレード。 YOSHIKIの自叙伝、YOSHIKIの半生を知りたくて買ったのに、これではまるで作者の自己陶酔に付き合わされているだけだ！と言う様な嫌悪感がページを進めるごとに湧いて行きました。 YOSHIKIの半生、とまでは行かないですがかつてXJAPANが1992年に世界進出を果たそうとし、アメリカはロックフェラーセンタービルで会見を開きましたが、その前後の顛末を書いた本 「蒼い血の微笑―YOSHIKI Super Non‐fiction Amethyst」の方がよっぽど読み応えがありました。 自叙伝を書くのであれば、ミュージシャンならマイルス・デイビス自叙伝、政治家であればフィデル・カストロ、経営者であれば出光佐三の自叙伝が個人的には上手く編集されていて、自伝として読むに値する書籍だと思います。 作者はイチロー、中田英寿、中村勘三郎のの自伝を今まで世に公表されて来た小松成美氏。 そんな大スターにインタビューをして来た作者であれば、小説のような情緒感を醸し出す文章で構成された自伝ではなく今までどんなライターも聞けなかったYOSHIKIの本音や半生をインタビューし、書き記して欲しかっただけに、残念。 これじゃあまだ、雑誌SHOXXを出版している旧知の音楽ライターに構成を任せた方がよっぽど良かったのでは？

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