孟嘗君(5)

宮城谷 昌光

1995年11月24日

講談社

1,708円(税込)

小説・エッセイ

【新たな宮城谷伝説、完結】 高きを求める英知と愛の生涯!いま函谷関(かんこくかん)の暁闇を破る者は?人間の大いなる心の成長を風韻高く描ききった文字通り最高の名品! 白圭(はくけい)は微笑していた。「文どのか」涸(か)れた声ではない。いのちのうるおいが残っている声である。「父上ーー」田文(でんぶん)は白圭の手をさぐった。その手は乾いていた。自分を大きくしてくれた手は、この手だ、とおもうと田文は涙がとまらなくなった。白圭はしみじみと田文をみている。「文どの、人生はたやすいな」「そうでしょうか」「そうよ……。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。わしは文どのを助けたおかげで、こういう生きかたができた。礼を言わねばならぬ」「文こそ、父上に、その数十倍の礼を申さねばなりません」「いや、そうではない。助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ。文どのにいいたかったのはそれよ」白圭はそれから洛芭(らくは)や斉召(せいしょう)などに顔をむけ、--田文がいちど別室にさがったわずかなあいだに、息をひきとった。--本文・函谷関から

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