おまえさん(上)
宮部 みゆき
2011年9月22日
講談社
1,980円(税込)
小説・エッセイ
痒み止め薬「王疹膏」を売り出し中の瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の“ぼんくら”同心・井筒平四郎は、将来を期待される同心・間島信之輔(残念ながら醜男)と調べに乗り出す。その斬り口は、少し前にあがった身元不明の亡骸と同じだった。両者をつなぐ、隠され続けた二十年前の罪。さらなる亡骸…。瓶屋に遺された美しすぎる母娘は事件の鍵を握るのか。大人気“ぼんくら”シリーズ第三弾。あの愉快な仲間たちを存分に使い、前代未聞の構成で著者が挑む新境地。
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(無題)
「ぼんくら」「日暮らし」と続くシリーズの第3作目、八丁堀ぼんくら同心・井筒平四郎の物語だ。このシリーズ、魅力に富んだ人物が登場する。真面目なのやら不真面目なのやら、根性のあるのやら無いのやら、ヒトのいいのやら底意地の悪いのやら、がらっぱちやら、ざっくばらんやら、うぶなのやら、遊び人やら、それぞれがきらきら生き生きと描かれているのである。今回は将来を嘱望される若い同心の間島信之輔とその大叔父の源右衛門がいい味を出している。弓之助の美形に対して新之輔は醜男。その上、真面目で人の気持ちに疎いところがある。 痒み止めの新薬を売り出して繁盛していた瓶屋(かめや)の主人新兵衛が殺される。平四郎は、信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。 政五郎親分は弓之助をおつむりが良いばかりでなく、素晴らしい眼力の持ち主だとか評価する。何が本筋で何が枝葉の事柄かを見抜く力だという。アタクシは上巻を読み終わって、瓶屋新兵衛と久助殺しが本筋だとは分かるが、さらに何故夜鷹が殺されたのか、新兵衛が瓶様を祀った訳など、テンデ見当もつかない。これがミステリーとして読者を引きつけて離さない作者の腕なのだろう。また、オデコの三太郎の生みの母が冒頭で登場してきたが、オデコとの絡みは一向に語られないし、読み始める前からの疑問、何で「おまえさん」なのかもわからないままだ。かくして、またまた分厚い下巻へと引き込まれる羽目となるわが身を楽しんでいる次第である。
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