東京タワーが見えますか。

江上剛

2012年6月30日

講談社

1,540円(税込)

小説・エッセイ

銀行員の今井は、取引先の町工場の社長にマンション経営を勧め、オーナーの座に就かせた。だが、経営はすぐに傾き、マンションは競売にかけられることに。人を幸せにするために仕事をしていたはずなのに、いつの間にか不幸にしてしまった。「東京タワーって優しい気持ちのときには鮮やかに見えるのです。」社長の言葉が、今井の荒んだ心に沁みる。-表題作ほか5編を収録。

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2.9 2018年01月29日

本書は、みずほ銀行築地支店長を勤めた筆者が、その豊富な知識と新しい視点で経済小説に新風を吹き込んだもの。みずほの築地支店といえば母店である。一介の支店長とは責任も権限も桁違い。 金融資本主義が、その暴力性を発揮し、人々の心をズタズタにしたことは、誰しも認めざるを得ないだろう。これではいけない、大事なのは金銭面での豊かさではない、真心だ。本書は、そんな著者の思いがしみじみと沁みる表題作の他、五編を収録した短編集である。 銀行員の今井は、取引先の町工場の社長にマンション経営を勧め、オーナーの座に就かせた。だが、経営はすぐに傾き、マンションは競売にかけられることに。人を幸せにするために仕事をしていたはずなのに、いつの間にか不幸にしてしまった。「東京タワーって優しい気持ちのときには鮮やかに見えるのです」というマンションオーナーの言葉に、自分の原点を見出す。それは、父親の町工場の後を継ぐことだった。 ある男の人生も、製造業に救いを求める物語だが、実際の経済の最先端はこんなもんではないだろう。銀行員として生きる主人公が資本主義の暴力性に懐疑心を持って向かうのが、物作りで確かな手応えを感じられ製造業であっては、あまりにステレオタイプすぎる。大過なくは、サラリーマンの哀愁が伝わってくる小品。座敷わらしは、ホノボノとした善意に貫かれている。最後のまだまだは、リコールをテーマとした秀作。 ●東京タワーが見えますか。 ●ある男の人生 ●大過なく ●座敷わらし ●爺捨て山騒動記 ●まだまだ

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