蒼穹の昴 3
講談社文庫
浅田 次郎
2004年10月31日
講談社
770円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
落日の清国分割を狙う列強諸外国に、勇将・李鴻章が知略をもって立ち向かう。だが、かつて栄華を誇った王朝の崩壊は誰の目にも明らかだった。権力闘争の渦巻く王宮で恐るべき暗殺計画が実行に移され、西太后の側近となった春児と、革命派の俊英・文秀は、互いの立場を違えたまま時代の激流に飲み込まれる。
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まっすぐで愛を忘れない人生
第3巻、今までゆっくりと流れていた変化の清流が、突如濁流となって物語を動かし始める、、、。 揚先生が謀殺され、王が袁を殺害しようとして捕まる。そして、順桂が西太后をイラハラの女を殺そうと計画を始める。今までの春のような、暖かで緩やかな展開が急にシリアスになった本編。革命を起こすのには犠牲がつきものだと言われる。しかし、ここまで、人を殺すということを行わないと、革命が起きないものだろうか。現在では考えられないが、当時は他に選択肢はなかったのだろう。日本の明治維新でも数多くの若者が殺された、坂本龍馬、中岡慎太郎 など。しかし、それでも物語、歴史は止まらずに動き続ける。各陣営が己の計算通りに行おうとするそんな様にとてもハラハラさせられ、この結末が何処に向かうのか、待ちきれない。 面白いことに、今回は列強という第三者の目線が追加される。今までは一人称で書かれていた小説が、二人称、そして三人称で語られる。フィクションではあるが、アヘン戦争や日清戦争等の流れもしっかりと組み込まれている本作。当時の人々も同じように考えたのだろうか。傑出しているのが、ニューヨークタイムズのトーマスの万朝報の岡。この2人は真実に真実を追求し、報道していく2人の様はとても潔く、そしてまっすぐだ。 特に、李将軍とイギリスの香港割譲についての議論では、99年の貸借ということで話を一致させた。その時の岡の発言は彼の仕事に対する誇り、そして滾る熱意を感じた。 このような目線を取り入れることで、立体的に話が膨らんでいく様がとても面白い。 そして、第二章「双頭の龍」 春児•文秀2人を表したこの表題。 まさに、理由のように華麗に、そして真っ直ぐ、一貫した2人の活躍に目を見張られる。 文秀は栄禄、李蓮英の企みの裏を描き、揚先生が隠居したように見せかけ、死体を隠す。なんと機転の聞く進士であろうか。実父にもなった、尊敬する師匠。涙を抑えながらも、必死にこの国の将来を考え、そしてそのように行動ができる彼は本当に素晴らしいお人だ。それだけではない。春児と久しぶりに再会をしたときに、過去の自分の発言を素直に謝る。立場が偉くなれば人は自分を傲り、周りを卑下するようになる。しかし、文秀に決してそんなことは起こらなかった。いつまで経っても、昔静海で生活をしていたあの頃から少しも変わってないのだ。勉学に励み、そのくらいをあげながらも、人に対する優しさ、真摯な態度、そして正直さを忘れない。 とてもかっこ良い。 それは、春児も一緒だ。 かれは本書にも書かれていたが、生けるキリストそのものだ。人に良いことをすると自分に帰ってくる。という諺もある中、それを体現している。必死になって臣官たちのお宝を自分の富を投げ打って返していく。それだけではない。貧しい子供や物乞い、そして教会にまで寄付をしているというのだ。彼はインタビューの中で、述べていた。 「この世に生きとし生けるすべての人間を、心の底から愛しています。そしてもちろん、あなたも、あなたも、あなたも。」 誰に対しても愛情を持って接することを忘れない。そして、その人の良さが周りからの信頼を集め、硬い絆を作る。それもすべては、過去の自分の苦い経験があったからだ…。 春児のように真っ直ぐは生きられないかもしれない。それでも、その生き方を体現していきたい、そう強く思った。
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まっすぐで愛を忘れない人生
第3巻、今までゆっくりと流れていた変化の清流が、突如濁流となって物語を動かし始める、、、。 揚先生が謀殺され、王が袁を殺害しようとして捕まる。そして、順桂が西太后をイラハラの女を殺そうと計画を始める。今までの春のような、暖かで緩やかな展開が急にシリアスになった本編。革命を起こすのには犠牲がつきものだと言われる。しかし、ここまで、人を殺すということを行わないと、革命が起きないものだろうか。現在では考えられないが、当時は他に選択肢はなかったのだろう。日本の明治維新でも数多くの若者が殺された、坂本龍馬、中岡慎太郎 など。しかし、それでも物語、歴史は止まらずに動き続ける。各陣営が己の計算通りに行おうとするそんな様にとてもハラハラさせられ、この結末が何処に向かうのか、待ちきれない。 面白いことに、今回は列強という第三者の目線が追加される。今までは一人称で書かれていた小説が、二人称、そして三人称で語られる。フィクションではあるが、アヘン戦争や日清戦争等の流れもしっかりと組み込まれている本作。当時の人々も同じように考えたのだろうか。傑出しているのが、ニューヨークタイムズのトーマスの万朝報の岡。この2人は真実に真実を追求し、報道していく2人の様はとても潔く、そしてまっすぐだ。 特に、李将軍とイギリスの香港割譲についての議論では、99年の貸借ということで話を一致させた。その時の岡の発言は彼の仕事に対する誇り、そして滾る熱意を感じた。 このような目線を取り入れることで、立体的に話が膨らんでいく様がとても面白い。 そして、第二章「双頭の龍」 春児•文秀2人を表したこの表題。 まさに、理由のように華麗に、そして真っ直ぐ、一貫した2人の活躍に目を見張られる。 文秀は栄禄、李蓮英の企みの裏を描き、揚先生が隠居したように見せかけ、死体を隠す。なんと機転の聞く進士であろうか。実父にもなった、尊敬する師匠。涙を抑えながらも、必死にこの国の将来を考え、そしてそのように行動ができる彼は本当に素晴らしいお人だ。それだけではない。春児と久しぶりに再会をしたときに、過去の自分の発言を素直に謝る。立場が偉くなれば人は自分を傲り、周りを卑下するようになる。しかし、文秀に決してそんなことは起こらなかった。いつまで経っても、昔静海で生活をしていたあの頃から少しも変わってないのだ。勉学に励み、そのくらいをあげながらも、人に対する優しさ、真摯な態度、そして正直さを忘れない。 とてもかっこ良い。 それは、春児も一緒だ。 かれは本書にも書かれていたが、生けるキリストそのものだ。人に良いことをすると自分に帰ってくる。という諺もある中、それを体現している。必死になって臣官たちのお宝を自分の富を投げ打って返していく。それだけではない。貧しい子供や物乞い、そして教会にまで寄付をしているというのだ。彼はインタビューの中で、述べていた。 「この世に生きとし生けるすべての人間を、心の底から愛しています。そしてもちろん、あなたも、あなたも、あなたも。」 誰に対しても愛情を持って接することを忘れない。そして、その人の良さが周りからの信頼を集め、硬い絆を作る。それもすべては、過去の自分の苦い経験があったからだ…。 春児のように真っ直ぐは生きられないかもしれない。それでも、その生き方を体現していきたい、そう強く思った。
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(無題)
全4巻の第3巻で、1895年の日清戦争 での敗北による袁世凱 の頭角と、清王朝の体制改革を望む康有為ら変法派の台頭を描きます。第3巻の見せ場は、老将李鴻章がイギリスと香港租借のための交渉に臨む場面でした。斜陽の清王朝 を背負い孤軍奮闘する李鴻章が格好良いです。なお、李鴻章の腹心王逸は、架空の人物だそうです。
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