世界史の中のパレスチナ問題

講談社現代新書

臼杵 陽

2013年1月31日

講談社

1,320円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

パレスチナ「国家」へ。中東危機の真相がよくわかる名講義。なぜ解決できないのか?難問の構造を歴史から読み解く。

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3.2 2018年01月28日

本書は新書の形態をとっていますが、質量とも優にその範疇を凌駕しています。力作です。第一次世界大戦前、パレスチナは、オスマントルコが支配し、アラブ系の住人が居住する土地でした。しかしその土地には、かつてユダヤ人の国家が存在していたという歴史もありました。 第一次世界大戦中、イギリスはアラブ人には独立を、ユダヤ人には民族国家の建設を認める条件で、人員や資金の面で戦争協力を要請しました。しかし戦後はその約束を反故にして、国際連盟の委任統治領として、フランスと分け合いました。これを不満としたアラブの多くは、第一次世界大戦後、独立運動を展開し、イギリスやフランスはこれを認めざるを得なくなりました。エジプト、イラク、サウジアラビアなどが次々と独立し、パレスチナもヨルダンの管轄下で半ば自治を獲得していったのです。しかし第二次世界大戦後に発足した国際連合において、突然“パレスチナ分割案”が提示され、ユダヤ人国家が建設されることになりました。このため、パレスチナ人は住む場所を追われる事となりました。これが、パレスチナ問題への私の理解でした。ところが、パレスチナ問題はそんな表層を捉えたところでは理解できないと言うのが本書を読んだ感想でした。 本書は、聖書の時代から現代までのパレスチナをめぐる歴史を辿り、パレスチナ問題の経緯と世界史的な文脈を描き出しています。しかし、通史の形をとってはいません。ひとつの重要なテーマを取り上げてそれを深く解説して行きます。一つのテーマを1講として、15講から展開されます。このような記述は、読者に何をもたらすかといえば、パレスチナを通して世界史を観る視点です。私たちの視点はどちらかといえば、西ヨーロッパ及びアメリカ、あるいはキリスト教徒の視点です。複雑に絡み合った宗教や国際情勢を丹念に読み解いていくと、また違ったものが見えてきます。 また、著者はアラビア語からヘブライ語研究に進み、エルサレム留学も経験した日本では異色の研究者です。ですから、本書の特色は著者はアラブの良き理解者として、パレスチナ人とユダヤ人の対立項だけでなく共通項にも言及します。 著者はあとがきで「私自身、かつてパレスチナ問題を語ることは人類の解放を語ることにつながるのだという確信を持ち、差別や抑圧のない社会を作るための一助になりたいという理想に燃えていたことがありました。しかし、現実のパレスチナが置かれている政治的状況は非常に厳しく、現在ではさらに絶望的なものになっています」と述べています。本書ほどの知見と検証ができる著者をもってしても絶望から脱出できないほど、パレスチナ問題は余りにも重い、と言われれば読者としてはその重さをしっかりと受け止めるしかないのだろうと思います。何れにしても良書ですので、お奨めです。

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