世界史を変えた薬

講談社現代新書

佐藤 健太郎

2015年10月16日

講談社

924円(税込)

美容・暮らし・健康・料理 / 新書

筆者はかつて、医薬品企業の研究所で新薬の研究に携わり、医薬の可能性と危険性について考える日々を送ってきた。もしこの薬があの時代にあったら、あの薬があの人物を救っていなければ、と考えるのは、歴史の愛好者として必然であった。もしコロンブスがビタミンCを知っていたなら、もし特殊アオカビの胞子が、ロンドンの病院のあるシャーレに飛び込んでいなかったら、間違いなく、現在の世界地図は大きく変わっていたはずだ。 医薬品というものは、どうにも不思議な代物だ。老若男女を問わず、誰もが薬のお世話になっているにもかかわらず、薬について詳しいことはほとんど何も知られていないに等しい。口から飲み込んだ小さな錠剤が、どのようにして患部に届いて痛みや炎症を鎮めるのか、簡単にでも説明できる人は相当に少ないだろう。 近年は、医薬品の過剰投与や副作用などネガティブな側面ばかりが強調されがちだが、人類は医薬品の発明によってその寿命を飛躍的に伸ばしていた。「死の病」と恐れてきた感染症は、抗生物質の発明により、ありふれた病気になった。あまり意識されないが、いくつかの医薬品は間違いなく、世界史を変え、人類の運命を変えてきた。 医薬の科学はなおも発展の途上にあり、今後さらに大きく社会を変えてゆく可能性を秘めているーーというより、確実に変えてゆくことだろう。とすれば、医薬と人類の関わりを、歴史の流れに沿って眺めておくのは、意義のある試みであるに違いない。 第1章 医薬のあけぼの 第2章 ビタミンC 海の男たちが恐れた謎の病気 第3章 キニーネ 名君を救った特効薬 第4章 モルヒネ 天国と地獄をもたらす物質 第5章 麻酔薬 痛みとの果てしなき闘い 第6章 消毒薬 ゼンメルワイスとリスターの物語 第7章 サルファ剤 道を切り拓いた「赤い奇跡」 第8章 サルファ剤「奇跡の感染症治療薬」誕生の物語 第9章 ペニシリン 世界史を変えた「ありふれた薬」 第10章 アスピリン 三つの世紀に君臨した医薬の王者 第11章 エイズ治療薬 日本人が初めて創った抗HIV薬

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Readeeユーザー

生物・化学に疎い人でも理解できる

starstarstarstarstar 5.0 2021年02月01日

非常に興味深い内容で一気に読んでしまった。 ちなみに2015年に出版された本なので新型コロナウイルスに関する話題は載っていない。 個人的に印象深いのは、マラリアの特効薬の研究の過程で出来た失敗作を染料に転用することを思いつき、やがて染料会社を立ち上げ大成功したというフランス人のエピソード。 成功する人はやはり目の付けどころが違う。

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