恋歌
講談社文庫
朝井 まかて
2015年10月15日
講談社
836円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗堂の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く、直木賞受賞作。
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女は何のために死ねばいいのだろう。
starstarstarstar 4.0 2020年04月13日
商人の娘として、志士の妻として、歌人として、幕末から明治初期の動乱を駆け抜けた誇り高き中島歌子という女性歌人の一生。
タイトルの「恋歌」の通り、随所に和歌が出てくる。その多くは「恋」をテーマとする。
例えば最初に出てくる「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思う」。非常に印象的に描かれるが、読了した今では、むしろこの歌こそが最初から最後までのテーマであったのではないだろうかと思う。
やっとの思いで結ばれた夫だが、幕末の動乱は否応なしに若き夫婦を切り裂いていく。中島歌子(澄世)は、夫の安否も分からぬまま、投獄され、地獄のような時期を過ごす。
はれて外に出たときに出たセリフは、とてつもない力強さを感じる。
「いいえ、逃げるんじゃないわ。生きるのよ。」
なんとなく感じていたのかもしれない夫の死を目の前にしても、動じることなく生きていくことを選んだ彼女。彼女の生の原動力には常に夫への恋慕があったのだろう。
「君にこそ 恋しきふしは 習ひつれ さらば忘るる こともをしへよ」
また、この人物が平和な明治生まれの娘たちを見て、毒づく場面は今の日本人への警鐘にも聞こえる。
「明治生まれのひよっこに何が分かる。歌はもう、命懸けで詠むものではないのだろうか。」
そして最後に、私がとても気に入った言葉がこれだ。この言葉は、澄世にしか言えない重い重いセリフであり、とても胸にきた。
「誰もが今生を受け入れてこの骸だらけの大地に足を踏みしめねば、一歩たりとも前に進めぬのだから。」
今の平和な日常は、先人たちの偉大な苦悩があってこそだと。改めて感じ入る作品だった。
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歌菜
強い女性の一生
中島歌子さんのことはこの作品を読むまでは知らなかった。幕末の水戸藩へと嫁ぎ、尊王攘夷に揺れる歴史の渦に呑まれながらも明治まで生き抜いた方。歴史的事実が主軸にあるのはもちろんですが、それを生々しく、また登場者の心情に寄り添い深く深く描いていた。故郷の悲しい歴史にも想いを馳せることが出来て、良かった
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