言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか

講談社学術文庫

J. L・オースティン / 飯野 勝己

2019年1月12日

講談社

1,408円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

「言語行為論」は、ここから始まった。寡作で知られる哲学者ジョン・ラングショー・オースティン(1911-60年)がハーヴァード大学で行った歴史的講義の記録。言葉は事実を記述するだけではない。言葉を語ることがそのまま行為をすることになるケースの存在に着目し、「確認的(コンスタティヴ)」と「遂行的(パフォーマティヴ)」の区別を提唱した本書によって、哲学は決定的な変化を受けた。初の文庫版での新訳! 本書は、哲学に不可逆的な影響を与えた記念碑的名著、待望の文庫版での新訳である。 ジョン・ラングショー・オースティン(1911-60年)は、イングランド北西部の街ランカスターに生まれ、オックスフォード大学ベリオール・カレッジに進学した。語学、音楽、スポーツなど多彩な才能に恵まれた中で最終的に哲学を選んだオースティンは、20代半ばには早くも教壇に立つようになる。しかし、カリスマ的な威圧感を漂わせつつ独裁的とも思えるふるまいが目立ったことにも示されているように、当時のオースティンは何よりも「破壊的」な哲学者だった。 オースティンが生涯に発表した公刊論文は、わずか7本。48歳で早逝したとはいえ、きわめて寡作だったオースティンだけに、1955年に行われたハーヴァード大学での講義は、哲学の歴史にとって決定的に重要な意味をもつことになった。それらのうち「ウィリアム・ジェイムズ講義」として行われたもののために書かれたノートが、本書である。ここでオースティンは初めて「構築」に転じ、みずからの哲学の到達点を示している。 本書で提示された理論は「言語行為論(speech act theory)」と呼ばれる。従来の言語論は、命題の真偽を問題にしてきた。それに対してオースティンは、言葉はただ事実を記述するだけでなく、言葉を語ることがそのまま行為をすることになるケースがある、と言う。例えば、「約束する」と発話することは「約束」という行為を行うことである。ここにある「確認的(コンスタティヴ)」と「遂行的(パフォーマティヴ)」の区別は、以降の哲学に不可逆的な影響を与えた。 言語行為論は、ジョン・R・サール(1932年生)といった後継者を生むとともに、ジャック・デリダ(1930-2004年)の批判を呼び起こした。それを契機に巻き起こったデリダ=サール論争は、よく知られている。 オースティン研究の第一人者による訳文は、オースティンの息遣いを伝えてくれるだろう。これからのスタンダードとなる決定版が、ここに誕生した。 編者まえがき 第I講 〔遂行体と確認体〕 第II講 〔適切な遂行体のための諸条件〕 第III講 〔不適切さ──不発〕 第IV講 〔不適切さ──悪用〕 第V講 〔遂行体の条件として考えうるもの〕 第VI講 〔明示的な遂行体〕 第VII講 〔明示的な遂行的動詞〕 第VIII講 〔発語行為、発語内行為、発語媒介行為〕 第IX講 〔発語内行為と発語媒介行為の区別〕 第X講 〔「……と言うことにおいて」対「……と言うことによって」〕 第XI講 〔言明、遂行体、発語内の力〕 第XII講 〔発語内の力の分類〕 補 遺 訳者解説 訳者あとがき 索 引

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