京都異界紀行

講談社現代新書

西川 照子

2019年9月18日

講談社

1,100円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

地霊に導かれ、怨霊の声を頼りに京都の町中を歩く。そこから見えてくる、本物の京都の姿とは? 「中世」をキーワードに、神と仏、聖と穢が繰り広げる怪しい京都の奥深く、地下水脈に潜入する。これまでにない、まったくユニークな京都案内。 京都では「生と死」は背中合わせ。と言っても、オドロオドロしい京都の風景は昔むかしのこと、今はきれいに清掃され、ちょっと見には「負」の部分はみえない。 ただ、私たちが本物の京都を知りたい、観たい、と思えば、1つ方法がある。 地霊である。何もない所であっても、その地に立ってただ風景を見る、そして、そこに住む「怨霊」の声に耳を傾けるーーすると、昔むかしの風景・出来事が甦る。怨霊たちは案内人となって、私たちを本物の京都へ誘ってくれる。 この『京都異界紀行』の案内人の第1に選んだのは崇徳天皇(1119〜1164)の怨霊である。 なぜ崇徳か。崇徳は保元の乱(1156)に敗れ讃岐国に配流、帰京の願いならず、配所で憤死した。崇徳の怨霊はしばしば都に現われて、タタリをなした。しかし明治元年、天皇の命により、讃岐の白峯宮より御所の西の地の白峯神宮に迎えられて、ひとまず鎮まったーーと、いうことになっていた。 いや、崇徳の怨霊は京の町を徘徊していたのだ。それでその後を付いて歩いてゆくと、「見えてきたもの」がある。 京の怨霊ネットワークである。 崇徳の怨霊が化した魔王・天狗とともに、イナリ・エビス・セイメイ(安倍晴明)等の裏の顔。松尾大明神に空也上人ーー神と仏が作り出す奇なる世界。 この京都の異界が一番よく見える「時代」がある。中世である。歴史も伝承も包みこんで、京の中世は、京都の真の姿を語る。 雅と死、花と葬地、怨霊と御霊、惨殺と鎮魂、天皇と乞食(こつじき)--「正」と「負」の京の仕組み。 パズルのように「事」と「物」をきれいに合わせて、美しい表面を作り出した京都。しかしまるで死んだはずの木の根が動き始め、大いなる力でコンクリートを割って地表に顔を出すように、京の「負」の影は現代の日常の中にも不意に顔を出す。ここにも、そしてあそこにも……。 本書は、怨霊を案内人として京を歩く。(「はじめに」より) 序章 例えば清水寺の花と死 第1章大社の表の顔と摂社・末社が抱える裏の顔 第2章 空也上人と松尾大明神 第3章 神となるための残酷と異形 第4章 ゑびす・イナリ・ハチマンとキツネ 第5章 日吉山王とヒメ神 第6章 大魔王・崇徳天皇の彷徨 第7章 菊渓川が誘う 第8章 開成皇子「胞衣伝承」と光孝天皇「盲人伝承」 第9章 「うつぼ舟」と「流され神」 あとがき

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