ノモンハン 責任なき戦い

講談社現代新書

田中 雄一

2019年8月21日

講談社

990円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

第二次大戦日本軍大敗北の「序曲」が、ここにある。村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』のモチーフになった満州北辺の戦争。「作戦の神様」「陸軍きっての秀才」と謳われた参謀・辻政信に率いられた関東軍は、なぜソ連・モンゴル軍に大敗を喫したのか。この悲惨な敗戦から、なぜ何も学ばなかったのか。NHKスペシャル放送時から話題沸騰の名作!辻政信が書き残した「遺書」の内容とは。

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(6

starstarstar
star
3.8

読みたい

5

未読

1

読書中

4

既読

21

未指定

41

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

ノモンハン事件については日本史の教科書にちらっと出てくるからなんとなく知っていたけど「ねじまき鳥クロニクル」にも取り上げられたという帯を見てそうだっけ?という興味が出たので手にとってみた。NHKのディレクターが番組の傍らまとめたものらしいけどちゃんとした本であった。地図で改めてみたけれどどう見ても戦略上意味がないモンゴルの平原で日本軍とソ連軍が戦い「事件」というには双方合わせて4万5千人が戦死したという戦い。しかも散々に負けた日本軍(戦死者数はソ連のほうが多いけど)は戦死者も全て回収しきれていないままなのだという。一部のエリート参謀が「国境を侵犯してくるモンゴルの弱い連中を懲らしめる」ために起こした戦闘は相手を見くびり、情報収集を怠り、自己の力を過信し、補給のことを考えず、精神論で戦った結果、日露戦争の結果から日本を警戒していたスターリンにいいようにやられる結果となった。その意味で当時の日本軍は独ソ戦におけるドイツ軍と酷似しているのだけど曲がりなりにもソビエトを植民地化するとともに英国との戦争を有利にする、という目的がドイツにはあったのだがノモンハンの日本軍にはそれもない。驚くべきは現場の指揮官と兵士には自死も含めた過酷な処罰を下しておきながらエリートの地位はすぐに回復させた結果、ガダルカナルを始めとする太平洋戦争においても同じ失敗を繰り返したことでこれが日本軍というか日本人の性質そのものであればとても嫌だな…と思った。この作戦を主導した参謀について「純粋悪」という評価があると遺族が憤っているということも紹介されていたが、個人的にはやはり「純粋悪」だと思う。私利私欲ではなく純粋に国益を追求した結果の悪事という意味で。精神論の恐ろしさもつくづく。作戦の甘いところは精神力でなんとかなるとした結果、敗戦の原因を精神力の無さに求めることになったのでは、と思いました。自国の軍人にこんなに残酷な国家も珍しいのでは、という思いが致します。嫌な話満載だけど一読の価値はありました。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください