鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学

講談社選書メチエ

菅 豊

2021年8月12日

講談社

1,980円(税込)

人文・思想・社会

ほんの少し前まで、日本列島に住む人びとは「鳥食の民」だった。赤穂浪士が食した「鴨肉入り卵かけご飯」、漱石が愛した「山下の雁鍋」、味噌仕立ての鶴の汁、白鳥のゆで鳥、雉子の刺身、鳩酒…。この「鳥食文化」は、武家社会の儀礼と政治に深くかかわり、周辺の村から江戸市中へ鳥を送る「生産と流通のシステム」は、アウトローをも呼び込む大きな利権を生んだ。日本の失われた食文化の全体像を、初めて描き出す異色作!

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toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

これはかなりの労作。作者は民俗学者で歴史や料理の専門家ではないところが興味深い。千葉は柏の辺りに手賀沼という湖があってたまたまその近辺の神社を訪れた際に江戸時代に百両もの寄進を行った町民がいることを知り、興味を持ってどういう人物か調べたところいわゆる任侠でありかつ、野鳥の卸売業者であったということを知って日本の鳥食文化について調べたという作品。上野には明治39年に閉店した願鍋の有名店があり江戸時代の料理屋番付では殿堂入りというかランク外の上位に位置されていたそうで日本人イコール魚食い、というイメージがあるけれど野鳥を食べる習慣はかなり古くからそして現在の我々が想像するよりもかなり幅広く行われていたものらしい。かなり丁寧に調査をされておりまたレシピなども載っていて興味深い内容。特に面白いのは贈答やもてなしに使われる鳥には順位があって、魚は鯉が最上位で次に鯛、という順番で不変らしいのだが鳥に関しては古くは最上位が雉、中世においては白鳥で近世では鶴だったということでこれは味ではなく生き物としての優美さとかそういうことであったらしい。捕り方にも差があって最上位は鷹狩で仕留められたものらしく、将軍が鷹狩で仕留めたものなどはとてつもない価値があったらしい。魚と違って鷹狩など将軍も自ら手掛けるからか猟区に関する規制や今で言うトレーサビリティもかなり厳しく運用されていたらしい。環境問題などで野鳥があまり捕れなくなったこともあり、また安価で飼育しやすく味も良い鶏が普及したこともあって野鳥食は一気に廃れてしまったらしいがそれでもまだ捕まえて食べてもよい野鳥は28種もいるらしい。個人的にはジビエの類はそこまで好まないのだが数年前に渋谷の焼鳥屋さんで頂いた鴨は確かに美味しかったな、などと思い返したりした。食に興味のある人や鳥料理好きには是非おすすめしたい。非常に面白かった。

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