『噂の眞相』25年戦記

集英社新書

岡留安則

2005年1月31日

集英社

770円(税込)

新書

噂は、「火のないところに煙は立たぬ」という譬えにならうなら、何かしらの真実を含んでいることがある。この場合、噂は社会への警鐘であり、私たちの生活の健全な潤滑油ともなる。『噂の真相』という雑誌は、一九七九年に呱呱の声を上げ、以来、スキャンダリズムという潤いを世に提供してきた。〇四年三月、その雑誌が休刊した。公人の噂を書くことすら封じ込めようとする「個人情報保護法」の発効を目前に控え、編集長、岡留安則は筆を擱いた。本書は、この名物編集長による体験的、実際的ジャーナリズム論であり、時代変遷の風雲録でもある。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月21日

「昭和天皇・マッカーサー会見」を読んでいて最も強く感じたのは、「天皇の周りの人間は、どうしてこんなに実際とは違う昭和天皇像を作り上げるのだろうか」ということと反権力である事が存在理由の大事な要素であるメディアが天皇を肯定的に伝えるのは何故か」という事であった。前者は官僚にとっては、その方が自分たちに都合が良いからだろうと見当がつく。後者は恐らく不利にならないように振る舞った結果なのだろう。皇室はタブーなのであろうか。また、タブーに挑戦するとは、どういう事なのか、そんな事を考えたくて、本書を読み始めた次第である。 やはりというか、図らずもというべきか「噂の眞相」におけるトラブル第1号は、皇室に関するものであった。いわゆる「皇室ポルノ事件」である。皇室ポルノ小説を素材とした記事(「天皇Xデイに復刻が取り沙汰される皇室ポルノの歴史的評価」)記事中にカットとして載せたコラージュ写真が右翼団体を怒らせてしまい、攻撃を受けたのだ。印刷をやっていた凸版印刷や広告を出していた企業が攻撃の対象となった。印刷と広告という、雑誌にとっては"命綱"を切る巧妙な作戦である。皇室については、天皇家に一般国民と同様の権利を与えた上で、京都に帰ってもらい、宗教法人の主宰者とする提案がなされており、興味深い。また、著者がタブーがあると認識して攻撃するのは警察、電通、天皇制、マスコミである。 反権力、言論弾圧には徹底的に戦うのが「噂の眞相」の基本ポリシーであるが、だからと言って肩肘張らない著者の力の抜け具合が実にいい感じなのだ。もう1つの編集方針は、著者はヒューマンインタレストだなんて気取っているが、実態は下品なのぞき趣味である。これは非難しているのではなく、褒めているのである。だって人間ポチポチでそんなに変わりがあるはずもなく、誰だってスキャンダルやゴシップは大好きだもの。いつもいつも芸能人のゴシップでは飽きちゃうけどね。 通読して感じるのは、検察とジャーナリストの人間的おぞましさである。公権力を駆使して悪を追求する検察には本来なければいけない自浄作用がない実態。そして、他人を批判する事を生業とするジャーナリストが非難される側に回った時のみっともなさには、目を覆うばかりだ。「噂の眞相」25年にわたる権力との戦いの記録もさる事ながら、そこから浮かび上がる人間模様こそ、本書第一の面白さなのかもしれない。

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