超マクロ展望世界経済の真実
集英社新書
水野和夫 / 萱野稔人
2010年11月30日
集英社
792円(税込)
ビジネス・経済・就職 / 新書
現在の世界経済危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、四百年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。資本主義の歴史的な構造変化を大胆に描いてきた異色のエコノミストと国家への深い洞察にもとづいて理論的考察をくりひろげる哲学者が、経済学者には見えない世界経済の本質を描く意欲的な対論。
本棚に登録&レビュー
みんなの評価(2)
starstarstarstar
読みたい
0
未読
0
読書中
0
既読
6
未指定
17
登録しました。
close
ログイン
Readeeのメインアカウントで
ログインしてください
Readeeへの新規登録は
アプリからお願いします
- Webからの新規登録はできません。
- Facebook、Twitterでのログイ
ンは準備中で、現在ご利用できませ
ん。
シェア
X
LINE
リンク
楽天ブックスサイト
楽天ブックスアプリ
© Rakuten Group, Inc.
キーワードは1文字以上で検索してください
Readeeユーザー
(無題)
引き続き水野本です。本書の方が実は先に出版されていますので、まずこちらを読むのがスジですが、逆になってしまいました。それでも、本書では、水野の主張がより丁寧に説明されているので、理解が一段と深まるという有利さはあります。 今回は政治哲学者・萱野稔人との対談です。今や500年におよぶ近代資本主義を機能させてきた諸条件は、急速に失なわれつつあり、中世封建社会の崩壊に匹敵するような局面にわれわれは立たされている、とまず水野が現状認識を述べます。一方の萱野は政治哲学者として、資本主義は新古典派エコノミストが言うように「国家と無縁」ではありえないという立場をとっています。水野の話を引き出しつつ「資本主義と国家の関係」について経済学とは別の視点から発言しています。 対談は「先進国の超えられない壁」「資本主義の歴史とヘゲモニーのゆくえ」「資本主義の根源へ」「バブルのしくみと日本の先行性」「日本はいかに生き抜くべきか」の5章からなっています。どの章でも、まず水野がデータを提出し、それを読み解くことで議論が始まります。 中世世界が崩壊して近代世界に移行した500年前の大転換期、いわゆる大航海時代との対比で現在の状況をわかりやすく解説しています。また、日本の超低金利状態は、500年前のイタリアの都市国家ジェノヴァの低金利以来のもので、これを「利子率革命」というのですが、すでに低金利は経済成長の止まった先進国全般に拡大しています。低利で調達された資本は先進国ではなく、成長余地の大きな新興国に流れるのは当然なことです。実体経済の成長は新興国で、金融経済は先進国でというわけです。500年前のスペイン(ハプスブルク帝国)とイタリア(ジェノヴァ共和国)の関係が、現在のアメリカと日本の関係になぞらえて説明されているところなど、経済覇権国と資本提供者の組み合わせという意味では実によくわかります。 歴史的な視点で 「今」 を眺めると、現在のさまざまな危機が、「なぜ、いつ、どのように生じてきたのか」という立体的な構造として見えてきます。本書の圧巻は「バブルのしくみと日本の先行性」にあるでしょうね。アメリカの経済戦略によって世界の経済が動き、日本が世界に先駆けてバブルになったのは何故か、その後失われた10年が30年にも渡って続いたわけがよくわかります。 本書では直接論及していませんが、最後にインフレターゲット論について。マネタリーベースを増やす事によってインフレを招く事は可能かどうかです。もはや実物投資では儲からないという状況の中でベースマネーを増やせば、短期で資金調達し、そこに金融技術でレバレッジをかけて長期債や株式、そして金融商品化した先物に投資して、瞬時に実物投資10年分の利益を得ようとするような行動を喚起することにしかなりません。そうした状況で量的緩和政策によってベースマネーを増やせば、物価ではなく資産価格の上昇をもたらすだけです。またバブルの再来です。 次に、円高と円安どちらがメリットがあるかについてです。これは、輸出のメリットを受ける産業の経済規模と、資源を輸入する素材産業の経済規模を比較すると明白です。実は素材産業の経済規模の方が大きいので、円高が有利なのです。ですから、現在の円安下では、原材料の高騰に伴って物価がジワジワと上がっています。決してマネーサプライを増やしたせいではないのです。
全部を表示いいね0件