金融緩和の罠
集英社新書
藻谷浩介 / 河野竜太郎
2013年4月30日
集英社
836円(税込)
ビジネス・経済・就職 / 新書
アベノミクスでにわかに注目をあびる金融緩和政策。しかし、「日銀が大量にマネーを供給すれば、景気が回復する」というのは机上の空論だ。「失われた二〇年」をもたらした本当の理由を覆い隠し、かりそめのバブルを引き起こすだけではないか。しかも副作用の大きさは計り知れない。国債の信用喪失に始まる金融危機、制御困難なインフレなど、さまざまなリスクを第一線のエコノミスト・経済学者らが、哲学者と徹底的に討論。金融緩和の落とし穴を見極め、真の日本経済再生への道筋を描き出す。
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鳴り物入りで就任した日銀の黒田総裁は、物価を2%まで上昇させるインフレターゲット論をぶち上げた。その政策根拠を理論的に支えているのは、リフレ派と呼ばれる経済学者である。岩田規久男副総裁を代表として、エール大名誉教授の浜田氏、財務相OBで嘉悦大学教授の高橋洋一氏などが代表的で、安部政権のブレーンとなっている。 リフレ推進派の主要な主張は、貨幣供給量を増やし、企業の設備投資や消費を活性化させようとするものだ。そうしたリフレ論に対して、書店にはアベノミックスを礼賛する本が山積みとなっている。現実に為替は円安に動き株式市場は値を上げている。マーケットは歓迎しているようにみえる。スーパーに買い物に行けば、原材料を輸入に頼る食料品は値上げのオンパレードだ。政策の意図したように現実が動いているようにみえる。しかし、私はどうも不安だ。輸入物価ばかりが値上りし、景気は一向に回復がしないか、しても回復の果実を味わえない時代がくるような気がしてならない。そんな気持ちでいるためか、こんな本が気になってならない。本書を読むとアベノミックスが空恐ろしくなってくる。 まず第一バッターの藻谷は、生産人口減社会のなかで、インフレ誘導策など不可能、トリクルダウン理論は高齢富裕層の貯金だけが積み上がって、それは銀行を通じて国債に化け、その国債が年金に化け、高齢富裕層と銀行と政府の間でぐるぐる資金がまわっているだけと喝破する。必要なことは、高齢富裕層から若者への所得移転、生産人口を補うための女性の就労を促進する様々な施策を進めることを提言している。 次に河野は、金融緩和は金融システムが危機のときにのみ有効な施策で、現在のような不況時の金融緩和は国債購入にばっかり投資が振り向けられて、民間経済が成長しない、各国経済にバブルをもたらす、立ち直れないほどの財政パニックをもたらす危険性がある、と指摘している。 最後に小野は、買う物に満足感が少ない成熟社会では現金保有願望が何より優り、そのために現金をいくら市中に回しても、特定の人たちの現金保有にばかり回ってしまって、人余りカネ余りは解消されないと指摘。通貨供給力をいくら増やしても消費者物価指数は増えも減りもせず、GDPも上がらないことが続いていることを示している。その上で、雇用につながる政策が必要と提言している。また今回は円の信用崩壊について厳しく指摘していて、そうした観点から安易な国債発行依存に警鐘を鳴らしている。
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新たな視点
金融緩和政策が思うように効かない理由が、新たな視点で解説され興味深い。大変勉強になった。
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