悲しみとともにどう生きるか
集英社新書
柳田 邦男 / 若松 英輔 / 星野 智幸 / 東畑 開人 / 平野 啓一郎 / 島薗 進
2020年11月17日
集英社
990円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
「不条理な喪失によって辛く悲しい思いに打ちひしがれている人が生き直す力を取り戻すには、(中略)喪失体験者が孤立しないでゆるやかにつながり合うことが、とても大切だ」--柳田邦男(第1章より) 「悲しみの中にいる人も、悲しみを知る者だからこそ、誰かを幸せにすることはできるし、自分自身が幸せを得ることもできるのだと思います」--若松英輔(第2章より) 「時に暴力的に作用する『大きな物語』や『マジョリティの声』に対抗するには、(中略)ただひたすらに個人の言葉を探し続けることが必要なのではないかと思います」--星野智幸(第3章より) 「重要なことは、ケアとセラピーだったら、基本はまずケアです。ケアが足りているならば、次にセラピーに移る。仮病でいえば、まずは休ませて、それでまだ何日も仮病が続くようなら、『仮病だよね』という話をしたほうがよいということですね」--東畑開人(第4章より) 「よく考えてください。被害者のケアを怠っているのは、国だけじゃありません。『準当事者』である僕たちですよ。僕たちは、ニュースで見た犯罪被害者のために、一体、何をしているのでしょうか?」--平野啓一郎(第5章より) 「社会がますます個人化され、『ともに分かち合う』ことがしにくくなっているが、宗教的な表象を引き継ぎつつ、悲嘆を『ともに分かち合う』新たな形が求められている。切実な欲求である」--島薗進(第6章より) 【まえがきーー入江杏 より】(抜粋) 「世田谷事件」を覚えておられる方はどれほどいらっしゃるだろうか? 未だ解決を見ていないこの事件で、私の二歳年下の妹、宮澤泰子とそのお連れ合いのみきおさん、姪のにいなちゃんと甥の礼くんを含む妹一家四人を喪った。 事件解決を願わない日はない。 あの事件は私たち家族の運命を変えた。 妹一家が逝ってしまってから6年経った2006年の年末。 私は「悲しみ」について思いを馳せる会を「ミシュカの森」と題して開催するようになった。(中略) 犯罪や事件と直接関係のない人たちにも、それぞれに意味のある催しにしたい。そしてその思いが、共感と共生に満ちた社会につながっていけばと願ったからだ。 それ以来、毎年、事件のあった12月にゲストをお招きして、集いの場を設けている。 この活動を継続することができたのは、たくさんの方々との出逢いと支えのおかげだ。 本書はこれまでに「ミシュカの森」にご登壇くださった方々の中から、6人の方の講演や寄稿を収録したものである。 【著者プロフィール】 柳田邦男:ノンフィクション作家。 若松英輔:批評家・随筆家。 星野智幸:小説家。 東畑開人:臨床心理学者。 平野啓一郎:小説家。 島薗進:宗教学者。 【編著者プロフィール】 入江杏:「ミシュカの森」主宰。上智大学グリーフケア研究所非常勤講師。
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