我が友、スミス

前回、サラバを読んだことで、情動が揺れ動かされたため、小説は一旦休憩していた。その間、飲酒量が増えて昼夜逆転、そして風邪、二次感染で扁桃炎になるといった散々な日常を過ごしていたが、ようやく心身共に落ち着いてきたため、一ヶ月ぶりに小説を再開。その間、精神科の古書を読んで脳が疲れていたので、小説のリハビリ期間として、示唆に富む考察しがいがあるが、サクッと読めるライトな本にしようと考え、代官山蔦屋で探索した。そうしたら、芥川賞候補で筋トレに関する小説が本棚に目されるように置かれていたので、この一冊を手に取った。 物語としてはかなり読みやすくあっという間に読み終えた。 自分自身がかれこれ筋トレを10年間ほど続け、フィージークのチャンピョンの友人もいるため、内容は容易に推し測ることができた。加えて自分は兼ねてから、女性のボディビルには興味があったため、非常に興味深かった。 今の時代、フィージークはスタイリッシュなモテマッチョを目指す体型を競う大会のため、男女共に人気があるのはよくわかる。男性のボディビルダーは、腕力という雄々しさを物語る上で、圧倒的な肉体は一目瞭然の指標であるため、その体型に憧れを求める気持ちもよくわかる。その反面、筋骨隆々を目指す女性のボディビルダーは、一筋縄ではいかない葛藤が垣間見える。そしてその背景には、女性性がかなり関係していると思う。 以前も書いたが、女性性は男性性に比してかなり錯綜している。男性は、富や名声、強さ、つまり経済力や権力、腕力といった力で評価を得る。これらの力は非常に抽象的な実態である反面、逆説的だが、鋳型のような杓子定規となり評価がわかりやすい。 それに反して、女性の評価は非常に具体的で、曖昧であり、軸がない。容姿端麗な外見を求められているかと思いきや、聡明でないと、男尊女卑のような扱いを受ける場面がある。しかし聡明すぎたり、地位や名誉があると、男性から疎われる場面もある。つまり評価は各々の男性の価値観で変わってしまう傾向がまずある。 そして更に錯綜とさせるのは、各々の女性性の概念を植え付けるのは母親であるところだ。母親がどのような女性に育ってほしいかで、幼少期に是認、禁止の繰り返しにより自己態勢が作られていき、母親特有の女性性の概念が各々に育っていく。しかし思春期に入り、アイデンティティが作られていく過程で、学校の友人や先輩から、女性性の概念を再構築していくことになり、そこで生み出された自分が考える女性性を追い求める。しかし幼少期に作られた自己からはみ出る場合は、葛藤を覚え不安になってしまう。幼少期に培った自己態勢は堅固な基盤に対して、新たに構築される自己は、砂上の楼閣である。そのような葛藤を経て、仮に自身の思い描く女性性を自己実現できたとしても、次に待ち受けているのは、自分が目指した女性性に対する女性からの賛否両論の評価である。このように、男性性に比べて女性性は千言万語で、弁舌に尽くし難い実態がある。 そういった葛藤を持った主人公は同僚男性から「女性は大変ですね」と言われ、嫌気を覚えていた。そして生きづらさを脱するために、主人公は「別の生き物になりたい」と筋トレをしているのだ。

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前回、サラバを読んだことで、情動が揺れ動かされたため、小説は一旦休憩していた。その間、飲酒量が増えて昼夜逆転、そして風邪、二次感染で扁桃炎になるといった散々な日常を過ごしていたが、ようやく心身共に落ち着いてきたため、一ヶ月ぶりに小説を再開。その間、精神科の古書を読んで脳が疲れていたので、小説のリハビリ期間として、示唆に富む考察しがいがあるが、サクッと読めるライトな本にしようと考え、代官山蔦屋で探索した。そうしたら、芥川賞候補で筋トレに関する小説が本棚に目されるように置かれていたので、この一冊を手に取った。 物語としてはかなり読みやすくあっという間に読み終えた。 自分自身がかれこれ筋トレを10年間ほど続け、フィージークのチャンピョンの友人もいるため、内容は容易に推し測ることができた。加えて自分は兼ねてから、女性のボディビルには興味があったため、非常に興味深かった。 今の時代、フィージークはスタイリッシュなモテマッチョを目指す体型を競う大会のため、男女共に人気があるのはよくわかる。男性のボディビルダーは、腕力という雄々しさを物語る上で、圧倒的な肉体は一目瞭然の指標であるため、その体型に憧れを求める気持ちもよくわかる。その反面、筋骨隆々を目指す女性のボディビルダーは、一筋縄ではいかない葛藤が垣間見える。そしてその背景には、女性性がかなり関係していると思う。 以前も書いたが、女性性は男性性に比してかなり錯綜している。男性は、富や名声、強さ、つまり経済力や権力、腕力といった力で評価を得る。これらの力は非常に抽象的な実態である反面、逆説的だが、鋳型のような杓子定規となり評価がわかりやすい。 それに反して、女性の評価は非常に具体的で、曖昧であり、軸がない。容姿端麗な外見を求められているかと思いきや、聡明でないと、男尊女卑のような扱いを受ける場面がある。しかし聡明すぎたり、地位や名誉があると、男性から疎われる場面もある。つまり評価は各々の男性の価値観で変わってしまう傾向がまずある。 そして更に錯綜とさせるのは、各々の女性性の概念を植え付けるのは母親であるところだ。母親がどのような女性に育ってほしいかで、幼少期に是認、禁止の繰り返しにより自己態勢が作られていき、母親特有の女性性の概念が各々に育っていく。しかし思春期に入り、アイデンティティが作られていく過程で、学校の友人や先輩から、女性性の概念を再構築していくことになり、そこで生み出された自分が考える女性性を追い求める。しかし幼少期に作られた自己からはみ出る場合は、葛藤を覚え不安になってしまう。幼少期に培った自己態勢は堅固な基盤に対して、新たに構築される自己は、砂上の楼閣である。そのような葛藤を経て、仮に自身の思い描く女性性を自己実現できたとしても、次に待ち受けているのは、自分が目指した女性性に対する女性からの賛否両論の評価である。このように、男性性に比べて女性性は千言万語で、弁舌に尽くし難い実態がある。 そういった葛藤を持った主人公は同僚男性から「女性は大変ですね」と言われ、嫌気を覚えていた。そして生きづらさを脱するために、主人公は「別の生き物になりたい」と筋トレをしているのだ。

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