銭売り賽蔵

集英社文庫

山本一力

2007年12月31日

集英社

733円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

金貨や銀貨を、町民の間で使われる文銭に両替する銭売り。深川でまっとうに商売をする賽蔵たちに対抗して、亀戸にあらたに銭座が開かれることになった。権力を盾にあらゆる手を使い、深川に食い込もうとする亀戸…。真摯に得意先に向き合う賽蔵、そしてその気概に応える大店の主人や仲間たち。商売とは、人と人のつながりとは、思いやりの心とは…、しみじみと現代人に問いかける時代長編。

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Readeeユーザー

(無題)

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2.3 2018年01月27日

通貨を小説の主役に据えると言う発想が卓越していますね。我が国の歴史上、全国的規模で貨幣経済が確立したのは、慶長年間以降になります。強力な統一政権による貨幣制度の確立は、全国の金銀鉱山を独占した徳川幕府の成立まで待たねぱなりませんでした。江戸時代の基軸通貨は、金貨でした。小判ですね。これに対して商業の中心地であった大阪で流通していた通貨は銀でした。さらに一般庶民の生活に切っても切れない通貨は、銅(銭)貨でした。これらの三貨の間は互いに変動相場で取引されるというものであり、両替商という金融業が発達する礎を築いたのでした。そして通貨の鋳造は、今にまで名を残す銀座は言うまでもありませんが、金座・銀座・銭座で行われました。通貨の発行を担ったのは幕府ではなく、金座は後藤家および金座人、銀座は大黒常是および銀座人と、特許を得た御用達町人であり、銭座は銭貨需要が生じる毎に公募された町人による請負事業でした。金貨および銀貨の鋳造は天領の金山および銀山から産出される地金を金座および銀座が預り、貨幣に鋳造し勘定所に納め、その一部を金座および銀座が受取る御用達形式と、金座人あるいは銀座人が自己責任で金銀地金を買い集め貨幣に鋳造し一部を運上として幕府に納める自家営業方式がありました。銭座については銭貨材料を自己責任で買い集めて銭貨を鋳造して両替屋に売却し、一部を幕府に運上するというものでした。銭座は銭を鋳造して売るのですが、実際に売るのは銭座から銭を買う両替商や町の銭売りたちだったのです。本作の主人公の賽蔵はこの銭売りです。 庶民は、普段は銭を使っていました。銭は庶民を象徴する貨幣ともいえます。そして、庶民の目線に一番近い所にいる存在が町の銭売りたちなのです。ですから、銭売りを描くことは、庶民を描くことにもなります。 本編の主人公・賽蔵は洪水の時、盥の船に乗せられていましたが、銭売りの由蔵に拾われました。賽蔵は由蔵に鍛えられ、深川で銭売りとなりました。そして物語は、金座の後藤家が亀戸村に大規模な銭座を開くという所から始まります。深川の銭座にとっては脅威であり、賽蔵たちは深川銭座を守り、深川に住む人間の生活を守るために、銭売りとしてできることを全力で行うのでした。賽蔵には十一人の仲間がおり、おけいという思い人がおり、銭座の中西五郎兵衛や賽蔵の後見人的な汐見橋の英伍郎がいます。そして、銭売りの商売を続ける中で知り合う、棟梁の甚五郎や水売りの元締・芳太郎、漁師の繁造、弁当屋の誠太郎、本両替の三井次郎右衛門らが賽蔵を表から裏から支えてくれる、そんな物語です。

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