左岸

江國香織

2008年10月31日

集英社

1,870円(税込)

小説・エッセイ

福岡で隣同士に住んでいた茉莉と九ー。踊ることと兄が大好きな茉莉は17歳で駆け落ちし、同棲、結婚、出産を経験する。数々の男と別れても、いつもどこかに、影のような九がいて…。江國香織と辻仁成の奏でる二重奏ふたたび。夢を信じることができるあなたに贈る柔らかな幸せの物語。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月19日

女の半生を描いた作品。ヒロインはひどく無防備に見える。そして自分を性において「奔放な女」ではないかと、恥じている。茉莉は結婚して娘を持ち、夫が死んでからは、その娘を育てながら仕事をしている。茉莉は自分を周りの男といい距離を保ちながらうまく付き合っている「大人」のふりをしているのではないかと疑ってしまう。そんな思いに陥らせるのは、10歳の時に自殺した兄・惣一郎と超能力者の幼馴染・九を身近に感じる時だ。茉莉が自分を「あばずれかな」と思うほど多くの男と性交渉をもったとしても、生涯で恋に落ち真剣に愛したのは、さきの父親・始だけであった。 仲の良い両親の元で育った茉莉は、孤独でダンス好き、周りからは扱いにくい子と見られていた。だから、子供の世界ではいじめられっ子であった。いつも茉莉を庇ってくれたのは、ふたつ上の兄・惣一郎と幼なじみの少年・九であった。親への反発と社会への拗ねが、17歳の茉莉を駆け落ちへと導いた。愛や幸せを生み出すには、あまりに未熟であった。結局は3人の男との不幸な関係を清算して、親元に帰ってやり直す茉莉であった。始との幸せな結婚も長続きはしなかった。不幸な運命が茉莉に襲いかかったのだった。 娘のさきが12歳になった今、茉莉は博多に帰ってきた。自分が生まれ育った場所にひとは、それほどに思い入れを持てるものなのだろうか。博多で自分の店を持つのは、茉莉にとっては集大成のようなものだった。ワインバーの女主人の座は、茉莉の歩みの当然の結果として待ち受けていたのだった。茉莉は居心地の良い場所とともに、穏やかで豊かな恋も同時に手に入れた。その反面、茉莉が手放さなければならないものもあった。15歳になったさきがパリに旅立ったのだった。 娘のさきが親元を巣立つのは当たり前であり、両親を葬るのは自然の摂理である。望まれた結婚を断わって恋人が離れて行ったのも自然の成り行きだった。今茉莉の手の中にあるのは、生まれ育った街にある落ち着いたワインバーの女主人の座と幼馴染の九との友情だ。やがてそれらも過去のものとなり、茉莉の存在はもはや人々の思いでの中だけにしか無くなるのだろう。今は、静かに暮れ行く黄昏時のようなものだ。茉莉の半生を振り返ると、案外平凡であったのかもしれない。

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