桐島、部活やめるってよ

朝井リョウ

2010年2月28日

集英社

1,320円(税込)

小説・エッセイ

バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が、突然部活をやめた。それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな波紋が広がっていく…。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。第22回小説すばる新人賞受賞作。

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starstarstar 3.0 2018年01月27日

「水曜日の南階段はきれい」。これは最後の恋MEN'Sに収録されていた小説である。この作品を読んで、私はこの人は只者では無い、と思った。それまで、高校生向きの薄っベラな青春小説を書く人と思っていたからである。改めて著者の原点とも言うべき処女作を「今更ながら」読んでみることにした次第である。 作者、朝井リョウは、この小説ですばる新人賞を取ったときには20歳を超えたばかりの大学生だったはずだ。彼は、具体的な実感をもって17歳の青春群像を書くことができたに違いない。本書は、桐島が部活をやめるという出来事の波紋を多角的な視点から描き出している。各章に1人の生徒が対応している。一つの物語ではなく、異なる六つ視点からの物語が語りだされるのだ。 当たり前のことではあるが、私が彼らと同年齢の今から半世紀前の意識と現代の17歳の感覚はかけ離れているということを、まず確認しておかねばなるまい。たとえば、女子高校生にとって、外見は決定的であるということだ。どんなに中身があっても、太り気味で髪の毛が脂っぽかったりすれば、まったく相手にされない。男子にとっては、女子の外見と同じように決定的なのは運動神経だ。しかも、彼らにはランクがあって自分が「上」「下」のどのランクに属するか、はっきりとわきまえているという。クラスは違っても『上』は『上』で固まるのだが、『下』はクラスを越えてまで『下』と固まることはない、というのだ。このように学園という閉鎖社会にあって厳然としたヒエラルキーが存在しているのだという。 それならば、「上」のランクに属する生徒は、常に快適であるのか。作者は桐島の親友、宏樹にこんな役割を与えている。彼は野球部員だが、毎日部活をさぼって放課後は「帰宅部」の2人の友人とバスケットをやって遊んでいる。しかし、彼は運動神経抜群で、練習などしなくても、ほんとうはどの野球部員よりも野球がうまい。カッコもいいから女子にはもてる。だが、宏樹は野球をやったところで、どうせそれで「食ってくわけでもない」し、大学でやりたいこともないので、適当に遊べるそこそこ上位の私立大学に入れればよい、と思っている。 桐島が部活をやめた理由は最後まで語られることはないが、ここらにヒントが隠されていそうだ。つまり、学校という世界の上ランクに属する少年は、それは学園ばかりでなく世界の閉塞感も感じているのだとすれば桐島がやめたわけも見えてくる。 こんな事は私の世代には無かったし、むしろ貧しかったが次の時代への希望に満ちていた。正に三丁目の夕陽の世界である。どちらがどうとも言えまいが、時代を開いて行くのは、いつの時代も若い世代である。であるから、部活をやめた桐島には、大いに期待したいところだ。

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