天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト

浅田次郎

2014年1月24日

集英社

1,650円(税込)

小説・エッセイ

五・一五事件の前日に来日した大スター、チャップリンの知られざる暗殺計画とはー粋と仁義を体現する伝説の夜盗たちが、昭和の帝都を駆け抜ける。人気シリーズ、9年ぶりの最新刊。表題作「ライムライト」ほか5編を収録。

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2019年04月05日

やっぱりかっこいいや。

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とも

(無題)

-- 2018年01月22日

第五巻が出たのを長い事気がつきませんでした。このシリーズ、9年ぶりというのですからね。もうすっかり完結したものと思ってましたよ。それでも読み始めると少しずつ思い出してきますね。大親分の目細の安を筆頭に、振袖おこん、説教寅弥、黄不動の栄治、百面相の常の面々、そして松の名調子。浅田次郎のピカレスク小説には、このほかに『キンピカ』『プリズンホテル』がありますが、このシリーズがダントツに面白いですね。他のシリーズがドタバタ的面白さであるのに対してこちらには深みがあります。 さて、第四巻の時代設定が昭和9年、時代はまっしぐらに戦争に向かいます。そんな世相では本シリーズの軽快な滑稽さは全く意味を失ってしまいます。そこで第五巻は時計を巻き戻して昭和初期に時代設定。昭和の初期は案外自由で都会的雰囲気に満ちた時代だったんですね。勿論、不況で大学は出たけれども就職出来なかったり、娘を身売りしたりと豊かではありませんでしたが、文化的には爛熟期にあったと言えます。例えば、モボ・モガ、エログロナンセンス、ルンペン、銀ぶらなどはこの時代の流行語です。それから「月光値千金」って曲知ってますか。ジャズが好きな人はあるいは知っているかもしれませんね。ビング・クロスビーが歌ったポピュラーソングですが、僕が聞いたのはナットキングコールでした。ともあれ、この時代はアメリカ文化が大量に入ってきたのが特徴的です。 その「月光値千金」ですが、本書で天切り松が振袖おこんを語る章の題名にしています。日本ではエノケンの歌が有名です。著者もエノケンの歌を下敷きにしているようです。こんな歌詞です。 ♪ 美しい人に 出会ったときは やさしく しとやかに ひざまずいて にやにやと 笑って 手を握りなさい 大声あげず 逃げ出さないならば 「あらまあ!いけ好かない人ですわね まあ! およしなさいましよ」 てなことを 言ったって もう大丈夫 彼女はわたしの両手を待ってます エノケンは江戸っ子らしくヒトをシトと発音しているのがまた粋ですね。さて、松が語る闇物語の内容です。罪もない男を3人も殺したとして拘置所で取調べを受けている女に松は、おこんについて語ります。慶應卒で洋行帰り住之江財閥の当主がおこんに一目惚れをして求婚されるんですね。その様子が上記の「月光値千金」の歌詞にそっくりなんです。この辺は著者のお遊びか、「どうだ、判るか」との読者への挑戦でしょうかね。粋で気風の良いおこん姐さんのこと、財閥の奥方に収まるわけがありませんよね。松はそんなおこん姐さんを次のように評して、女を諭すのでした。「今にして思や、さほどのべっぴんだったとも思えねえ。だが、男はみんなすれ違いざまに惚れた。女はもっと惚れた。あれァ、姿形じゃあねえんだ。心意気がおめかしをして歩っているようなもんだった」。 もう一つ「ライムライト」を紹介します。ライムライトと聞けばキートン、ロイドと並ぶ喜劇王チャップリンの悲しい恋物語を連想しますね。チャップリンは昭和7年に来日しています。この年には⒌15事件が起きています。海軍青年将校らが武装して何箇所かに侵入し、首相官邸では犬養毅首相が暗殺されました。この事件に絡んで首謀者は来日中のチャップリンも「日本文化を破壊した」として殺害する計画があったようです。作家の想像力ばかりでなく、時代考証やしっかりした取材は作品をより面白いものに仕上げますね。松が現在のお笑い芸人はツマラナイという事から、昔の芸人の話をするんですね。それがチャップリンでした。チャップリンが万一殺されでもしたら、とんでもない国際問題になります。これを避けるためには、非公式の動きが求められます。こうして出来上がった一幕、筋書きが白井検事総長、演ずるのは書生常です。しかも、バイプレーヤーには天下のチャップリンが控えているのです。チャップリンは、最後にアドリブを演じるのでした。 雪のように白い光、それはライムライトでした。舞台上の喜劇王を照らしだしました。たった一人の観客のために。チャップリンらしい哀愁に満ちたお話でした。

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