ヒロシマを暴いた男 米国人ジャーナリスト、国家権力への挑戦

レスリー・M・M・ブルーム / 高山 祥子

2021年7月15日

集英社

1,980円(税込)

小説・エッセイ / 人文・思想・社会

原爆の正体を世界中に知らせた、一人の記者がいた。 1946年8月、とある雑誌の特集記事にアメリカ中が騒然となった。第二次世界大戦でアメリカに勝利をもたらした広島と長崎の原子爆弾が、1年後も市民に後遺症と死の苦しみを与えていることを、人々は全く知らなかったのだ。 のちに世界的名著となったルポ『ヒロシマ』は、いかにしてアメリカ軍やGHQの隠蔽と検閲をすり抜け、世に知られるに至ったか。小説でピューリツァー賞を受賞しながらも才気ある記者として活躍したジャーナリスト、ジョン・ハーシーと雑誌『ニューヨーカー』の軌跡を辿る。 【著者略歴】 レスリー・M・M・ブルーム Lesley M.M. Blume ロサンジェルスを中心に活動しているジャーナリスト、ノンフィクション作家、小説家。『ヴァニティ・フェア』『ニューヨーク・タイムズ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『パリ・レヴュー』など各紙誌に寄稿している。アーネスト・ヘミングウェイについて執筆したノンフィクション『Everybody Behaves Badly』は、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーランキング入りを果たした。 【訳者略歴】 高山祥子 (たかやま・しょうこ) 1960年東京生まれ。成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科卒業。翻訳家。訳書にキース・ジェフリー『MI6秘録』上・下(筑摩書房)、ヒラリー・ロダム・クリントン『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』(光文社)、ジェームズ・バロン『世界一高価な切手の物語』、アリソン・マクラウド『すべての愛しい幽霊たち』、ケイト・ウィンクラー・ドーソン『アメリカのシャーロック・ホームズ』(以上東京創元社)など多数。 【英語版タイトル】 FALLOUT : The Hiroshima Cover-up and the Reporter Who Revealed It to the World

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(1

starstarstar
star
3.5

読みたい

4

未読

1

読書中

0

既読

9

未指定

9

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

お恥ずかしながら原子爆弾の影響について米国もGHQも報道を規制していた、ということを本作を読むまで知らなかった。アメリカ政府的には非人道的なナチスドイツを倒した国が非人道的な兵器を用いたと言いたくなかった、マッカーサー的には日本を倒したのはあくまで自分であって自分の預かり知らないところで開発された強力な兵器のことは伏せておきたかった、ということらしい。従って原爆投下直後に広島や長崎を取材した記者は何人かいたもののそれが報道されることはなかったのだそうだ。雑誌「ニューヨーカー」の編集者達は何か不自然なものを嗅ぎつけピュリッツァー賞受賞作家を広島に送り込み通常爆弾と異なり爆発後も苦痛を与える兵器でありそれを残酷にも行使したということを暴かせる。ニューヨーカーという雑誌はどちらかというと軽めの小粋な内容が主な内容というイメージなのだが通常の連載記事を全てやめて広島の取材記事だけを載せた号を突如出版しこれが大スクープとなったものらしい。その影響は大きく、トルーマン大統領は直接指示をして退役将軍に反論記事を書かせたほどで核の恐怖、ということが広く知らしめられたのはこの記事のおかげらしい。既に始まっていたソビエトとの冷戦において優位に立てる、という米国の政府や軍の思惑の変化ということも多少はあっただろうが報道の存在意義や良質なスクープの重要性ということがよく分かった。非常に面白かった。おすすめです。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください