謝るなら、いつでもおいで

川名壮志

2014年3月31日

集英社

1,650円(税込)

人文・思想・社会

友だちを殺めたのは、11歳の少女。被害者の父親は、新聞社の支局長。僕は、駆け出し記者だったー。世間を震撼させた「佐世保小6同級生殺害事件」から10年。-新聞には書けなかった実話。第十一回開高健ノンフィクション賞最終候補作を大幅に加筆修正。

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Readeeユーザー

結局、何のためのジャーナリズムなのか

starstar 2.0 2020年11月08日

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月22日

本書を読み進めるうちに湧いてくる感情をなんと言い表したらいいのでしょうか。月並みではありますが、衝撃的と表現するのが最も妥当だと思われます。本書は2004年6月1日午後、長崎県佐世保市の市立小学校で、6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで切り付けられ、死亡した事件を当時毎日新聞佐世保支局の記者だった著者がノンフィクションに仕立てた書です。まず最初に伝わってくるのは、メディアに携わる人間が事件の被害者となった時の戸惑いです。著者は被害者ではないのですが、殺された女児の父親が毎日新聞佐世保支局長で、支局は支局長を入れてスタッフ3人、支局長の自宅は支局のワンフロア上で被害女児は学校帰りに毎日支局に顔を出すような日常の中で起きた事件でした。日常的に接していた子供が殺されたとしたら、大部分の人は自分の感情をどう整理したらよいか、しばらくは茫然自失して当然です。しかも、著者は新聞記者として事件の報道を仕事としているのですから、複雑です。 次には、小6の女児が同級生の首をカッターナイフで切り裂き、殺したという事件の異常性が気になります。同級生の首を切り裂き絶命するまで現場に止まるなんてことが、11歳の少女にできることなんでしょうか。教諭や事件後に接触した警察関係者、弁護士全ての大人達は彼女の印象を普通で異常性の欠片もないと語っているのです。それではなぜこのような事件が発生したのか、少女が同級生を殺害しようと思うまでになった原因はどこにあるのか、との世間の関心が高まっていった時、意外な方向への進展がありました。犯行を行った加害女児と被害者は、互いにウェブサイトを運営し、パソコンでチャットや、掲示板に書き込みをする仲だったことがわかってきたのです。ネットでの少女の興味はオカルトやホラー、そして愛読書がバトルロワイアルであることが明らかになるにつれ、メディアは一斉にそちら方面に雪崩をうちました。 さて、事件から10年たった今、著者はなぜ本書を世に問うたのでしょうか。事件の本質や動機に新たな事実が出てきたわけではありません。事件にひとりの人間としてずっとわだかまりを持ち続けた著者だから書ける真実や関係者の心の内が本書に詰まっています。次々と凄惨な事件を追いかける新聞記者であれば、殺人事件は消費する情報のひとつにしかすぎません。そこにあるのは、あたかも見てきたように思い入れたっぷりに読者の下品な好奇心に迎合する記者像です。多くの新聞記者は新聞社という会社組織やマスコミ業界で揉まれるうちに、大人の振る舞いを身に付けてそんな記者となっていくのです。ところが、著者はこの10年を少年犯罪人とは何か、触法少年の取り扱い、触法少年と社会、犯罪被害者の家族及び加害者の家族と社会の関わり方について深い思索を積み重ねてきたようです。その成果が本書の隅々にまで現れて、単なるドキュメント以上のものにしています。 いま、新たな視点から事件のあらましを追ったのが第一部であり、本書の特徴ともなっている被害者の父親と加害者の父親、被害者の兄のインタビュー記事で構成されるのが第二部です。凄惨で救いようのない事件を扱っているにもかかわらず、読者を絶望の淵から救っているのがこの第二部の存在です。とりわけ、被害者女児の兄が精神的にこの事件を乗り越えていく様は感動的です。加害者はまだしも、被害者の遺族や加害者の家族が生涯に渡って事件の傷を背負っていかなくてはならないのは、動機が本件のように「発達障害」と位置付けられては、降って湧いた災害に遭遇したようなものです。事件が被害女児の兄に残したPTSDは深いものがあり、不登校となって一時は入院を勧められるほどでした。この少年が事件を乗り越えられたのは、忘れることでも憎むことでもありませんでした。加害女児と正面から向き合って許す事でした。彼は今では成人を迎えた女児にこう言います。 「普通に生きて欲しい」 「謝るなら、いつでもおいで」

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