
寂しい写楽
宇江佐 真理
2013年2月28日
小学館
680円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
人気作家宇江佐真理が謎の絵師写楽に迫る! 寛政の改革令に反旗を翻した蔦谷重三郎は人気歌舞伎役者の大首絵刊行を試みる。そして起用されたのは謎の絵師・東洲斎写楽だった。写楽はその正体を明らかにしないまま、十ヶ月の間に百四十余点の傑作浮世絵を発表する。助っ人にかり出されたのは山東京伝、葛飾北斎、十返舎一九の三人。 写楽を大々的に売り出そうとするプロジェクトを進めていく重三郎とその三人を軸にしながら、滝沢馬琴、太田南畝、喜多川歌麿、歌川豊国らも巻き込んで、物語は進んでゆく。明かされていく写楽の正体と江戸末期のクリエイターたちが繰り広げる群像劇にページをめくる指は止まらない。 屈指の時代小説家宇江佐真理氏が史実を踏まえて描ききった異色の歴史小説。
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(無題)
天明から文化文政にかけてのおよそ40年間は、ある意味面白い時代である。この期間の将軍、徳川家斉は「賄賂政治」とまで言われた田沼意次を失脚させ、白河藩主で名君の誉れが高かった松平定信を老中首座にすえた。松平定信は、逼迫した幕府財政の立て直しのために「寛政の改革」を断行した。江戸の市民にあらゆる奢侈な生活や贅沢を禁止し、芝居や出版、文化や芸術を弾圧した。それらは精神と生活の弾圧とも言えた。このため「寛政の改革」は、かえって江戸経済を混乱させるところとなった。こうして「寛政の改革」は、松平定信の失脚によって終わりを遂げ、徳川家斉自身は側近政治を行い、再び奢侈な生活を送ったり、賄賂を推奨したりしたため、幕府財政はますます逼迫するようになっていった。加えて、外国船の渡来などがあり、社会状況は極めて不安定だった。幕藩体制は崩壊し始めていた。 この寛政の文化弾圧と社会危機が増大した時代に謎の多い浮世絵師・東洲斎写楽をはじめ、版元・蔦屋重三郎や山東京伝、葛飾北斎、十返舎一九、滝沢馬琴、そして狂歌師として名をなした太田南畝などの人々が綺羅星のごとく出現した。ここに名を記した人々は、今日では極めて優れた才能を開花させた人々として著名であり、現代では写楽の役者絵も高い評価を得ているが、本書では、それぞれに生活の苦労をしながら戯作や絵画芸術に打ち込んでいく姿が人間臭く描かれている。また、これらの人々は、ある意味では時代が生んだ寵児でもあるが、爛熟した江戸の文化を最も良く表した人々と言えるであろう。あるいは、江戸という独特の暮らしが成り立つ社会の中で、貧乏長屋に住みながらも誇りだけは失わなかった町人文化が生み出したものであるとも言えるだろう。 本書は写楽の絵を売り出し、また失敗していくことを中心に据えてこの時代の文化人たちの姿が描かれる。また、写楽が残した絵を「寂しい」という独特のニュアンスのある観点から見ようとした意欲作でもある。 なお、原稿料あるいは印税と言ったものは、この頃までに版元から一切支払われていなかった事を本書で発見した。意外な事実であった。
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