1Q84 BOOK3〈10月ー12月〉後編
新潮文庫 新潮文庫
村上 春樹
2012年6月30日
新潮社
825円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
その誰かは、そこにあるものが本当にあることを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。青豆、と天吾は思った。しかし声には出さなかった。彼はその手を記憶していた。-青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって…。
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なぜ爆発的に売れたのか
-- 2020年02月06日
(BOOK3前編からの続き)村上春樹にとって本書の執筆は、「総合小説」たるべく多くの読者を獲得するための企てであったのではないか。よく売れなければ「総合小説」にならない、というわけではない。しかし時を超えて「総合小説」という評価を確固たるものにするためには、どの時代においても多くの読者を獲得することが必要である。 村上春樹は批評は気にしないかわりに読者の反応は意外と繊細に気にしているきらいがある。それは読者が嫌がるものをあえて書かないという消極的なものではなく、どう書いたら読者がどう反応したかを積極的に知ることに手応えを感じている様子がある(解題やインタビュー集からそれがうかがえる)。本書は多くの読者の好意的な反応を意図したのだろう。そしてそれは現実のものとなった。さすが、とうなるしかない。
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