謎のアジア納豆

香ばしく焼かれた鮭や、立ちのぼる味噌の香り、、そして炊きたてのご飯と納豆。多く人が、イメージする“日本固有の”朝の食卓だ。むしろ理想的すぎて、現代の多忙な日本人の実情とはかけ離れているのかもしれない。 長らく、そして僕を含めて多くの日本人が、納豆を「日本独特の食文化」だと思ってきた。 アジア各地に散らばる納豆文化を取材した本書は、そんな当たり前だと思ってきた僕たちの常識を、軽々と飛び越えるところから始まる。 タイ、ミャンマー、ネパール、中国。 世界には日本より納豆文化に親しんだ“納豆先進国”があり、様々な表情を見せてくれる。例えば、日本では納豆といえばあくまで「ご飯のお供」だが、多くの国では炒め物や汁物の調味料や出汁として使われているようだ。納豆が食事の根幹を成す味を作り出している。 そして何よりこの本は、納豆をキーワードにして、世界の食文化や民族問題にも触れながらアジア旅行記のようになっている。まさに納豆がアジア圏を繋いでいる。 まさに納豆が繋ぐ赤い糸を味わわせてくれる、名作だと思う。

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