水曜の朝、午前三時
新潮文庫
蓮見圭一
2005年12月31日
新潮社
572円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
45歳の若さで逝った翻訳家で詩人の四条直美が、娘のために遺した4巻のテープ。そこに語られていたのは、大阪万博のホステスとして働いていた23歳の直美と、外交官として将来を嘱望される理想の恋人・臼井礼との燃えるような恋物語だった。「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら…」。失われたものはあまりにも大きい。愛のせつなさと歓びが心にしみるラブストーリー。
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(無題)
タイトルも、文庫の裏表紙の要約も、苦手なタイプの甘いラブストーリーかな?という感じなのに、読んでみるとどっしりした話だった。45歳で亡くなった四条直美が、娘のために吹き込んだテープを、娘の旦那である「僕」が書き起こす、という形で物語が紡がれる。23歳の直美は、頭の回転の速い優秀な女性であり、大阪万博のホステスとして働く。彼女の、自分が優秀であるとはっきりと理解している、自信と傲慢さが随所に感じられる。 直美は臼井さんと出会い、二人は互いに惹かれあっていく。 臼井さんは実は朝鮮人であり、それゆえに二人は結局結ばれない。時代背景を考えると彼が朝鮮人であることは重すぎる事実だったのだろう。 タイトルは、臼井さんの妹が自殺した時刻である。全くもって甘くない。 p.58 小説家や映画監督が若い人を主人公にするのはなぜだか分かりますか?人生に直面しているのは若い人だけだからです。一生を左右するような出来事が起きるのはせいぜい二十代までで、あとの人生はその復習か、つけ足しにしか過ぎないのです。 p.285 何にもまして重要なのは内心の訴えなのです。あなたは何をしたいのか。何になりたいのか。どういう人間として、どんな人生を送りたいのか。それは一時的な気の迷いなのか。それともやむにやまれぬ本能の訴えなのか。耳を澄まして、じっと自分の声を聞くことです。歩き出すのは、それからでも遅くはないのだから。
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