プリンシプルのない日本

新潮文庫 新潮文庫

白洲次郎

2006年6月30日

新潮社

649円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

「風の男」、そして「占領を背負った男」-戦後史の重要な場面の数々に立ち会いながら、まとまった著作は遺さなかった白洲次郎が、生前、散発的に発表した文章がこの一冊に。「他力本願の乞食根性を捨てよ」「イエス・マンを反省せよ」「八方美人が多すぎる」など、日本人の本質をズバリと突く痛快な叱責は、現代人の耳をも心地良く打つ。その人物像をストレートに伝える、唯一の直言集。

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3.1 2018年01月28日

文は人なり。その人を知るには文章を読むに如かず。と言う事で、白洲次郎をさらに知ろうとして本書を手にとったのです。先ず表紙のポートレート、いつ、どの様な状況で撮られたのか分かりせんが、何とも寂しそうな眼差しが印象的でした。 本文を読んで先ず気になったのは次の様な一節でした。『戦争前に1年に1万トン売っていたが、今5000トンだから、もう5,000トン頑張らなくちゃ、と言う式の議論は馬鹿げている。また戦争前にこういう事業があったが、今はダメになっているからこれを何とかしなくては、という議論も馬鹿げている。どういう産業が適当な輸出産業かと言う事は今から決まることで、戦前の実績は何らの指針にならない』。 当時の経済人や政治家の問題意識の在り方がよく分かる文章です。読んでいて私の脳裏をよぎったのは「アベノミックス」でした。この当時と同じ様に、現在の財界人や政治家、エコノミストの頭の中にはかっての輸出産業主導の好景気の夢よもう一度、の思いがある様です。円安誘導で輸出産業を潤わせれば、企業は労働分配率を高めて、勤労者の所得が増えて内需拡大になり、好景気が循環する絵を描いているのでしょうが、そんなに上手く行くのでしょうか。第一、会社は誰のものか、と問われれば間違いなく株主のものと、多くの人は答えるでしょう。日本の上場企業の大部分において、筆頭株主は外資が占めているのも、多くの人が知るところです。では、その様な好決算を上げた会社にあって、株主は高配当を得る事より労働分配率を高める事に賛成するでしょうか。また、日銀は円安誘導の為に、マネーサプライを今の2倍に増やすそうですが、これに飛びつくのは日本の企業ではなく、外資の投機資本である事は容易に予想できます。低金利で資金調達した外資が次に狙い撃ちするのは何処の国になるのでしょうか。何れにしてもバブルになり、その泡が破裂する経験を私たちは目のあたりにしてきました。また同じ轍を踏むのでしょうか。 ところで、本書は白洲が『文藝春秋』や『新潮』『週刊朝日』などに書いた稿を中心に編まれています。白洲人気が高まるにつれ、本人の書いたものに触れたいとの読書人の要望に応じて、執筆時から五十年近くも経て本書は刊行されました。これだけの時間的な経過があるにもかかわらず、白洲のものの考え方や視点、それに歴史を透視する力には現代の我々から観てもまったく違和感を感じません。一見すると、頑迷な保守主義者による占領政策批判のようにも聞こえなくもありませんが、白州の指摘は、私たちがうっかり見過ごしていた所に鋭く言及し、その矛盾点を解明していますので納得せざるを得ません。そして私たちの歴史を捉える姿勢を改めるように迫ってきます。 また、あの太平洋戦争についても、「吾々の時代にこの馬鹿な戦争をして、元も子もなくした責任をもっと痛烈に感じようではないか。(略)吾々が招いたこの失敗を、何分の一でも取返して吾々の子供、吾々の孫に引継ぐべき責任と義務を私は感じる」と自省しています。この言葉は、高度経済成長を謳歌した我々団塊の世代以前の大人たちにキチンと責任を果たしなさい、と迫っている様に感じられるます。本当に今の日本のオトナは、欲を捨てて明治人の気骨に学ぶべきだとおもいます。

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