
初陣
隠蔽捜査3.5
新潮文庫 新潮文庫
今野 敏
2013年1月29日
新潮社
737円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる。ある日、誤認逮捕が起きたという報に接した伊丹は、困難な状況を打開するため、大森署署長の竜崎に意見を求める(「冤罪」)。「隠蔽捜査」シリーズをさらに深く味わえる、スピン・オフ短篇集。
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(無題)
僕は隠蔽捜査シリーズを第四巻から読み始めたので 竜崎伸也が主人公だと思っていたら、本書では伊丹俊太郎が主人公で竜崎伸也はバイプレイヤーである。ところがこのバイプレイヤーは、とんでもない役割を担っている。竜崎の一言で物語の流れが一気に決まってしまうのだから、その存在感たるや計り知れない。伊丹のイジイジと悩む人間らしさと、全てを論理で割り切る竜崎の対比、伊丹のSOSに対する竜崎の御託宣はあたかも神の言葉のようだ。 小説雑誌に連載された読み切りをまとめた短編集で、シリーズ3.5と謳っているところからは、本編から派生したスピンオフ作品と位置付けられようか。 窮地に立たされた伊丹が竜崎に助けを求め、竜崎が持ち前の原理原則の合理性を駆使して解決に導いていくというスタイルは共通で、不正な裏金捻出や不祥事を起こした部下の処分といった緊迫した状況もあれば、旅行や病欠などという日常的な状況であれこれ悩むエリート伊丹の姿が滑稽である。
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