張り込み姫

君たちに明日はない3

新潮文庫 新潮文庫

垣根 涼介

2012年4月30日

新潮社

781円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

「一生の仕事なんて、ありえないんじゃないんですか?」変わり続ける時代の中で、リストラ面接官の村上真介が新たにターゲットとするのはー英会話スクール講師、旅行代理店の営業マン、自動車の整備士、そして老舗出版社のゴシップ誌記者。ぎりぎりの心で働く人たちの本音と向き合ううちに、初めて真介自身の気持ちにも変化が訪れ…仕事の意味を再構築する、大人気お仕事小説シリーズ第3弾。

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Readeeユーザー

(無題)

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3.2 2018年02月14日

本書で内情が晒される業界は、英会話学校、旅行会社、自動車ディーラー、そして出版社である。すはふこへてさこへてさ表題作『張り込み姫』は出版社系の写真週刊誌の内幕を赤裸々に描き出している。本書の版元を思わせる新宿の真潮社、さらには写真週刊誌FOCUSを連想させるFACES編集部が舞台。 編集部内で日野恵は姫と呼ばれるが、お姫様をイメージしてではない。もう一人の恵美と区別するために『ヒメグ』と呼ばれていたのがいつの間にか、さらに短縮されてヒメ・姫となったのだ。写真を前面に押し出した新しいジャーナリズムのスタイルが読者に受け入れられた写真週刊誌は、政治的な事件や災害、事故などのスクープも多く、当初、丹念な取材と張り込み取材に基づく記事は読者の喝采を持って迎えられた。しかし、そんなスタイルも次第に読者に飽きられ、今では発行部数の減少とともに、一時の勢いは失われ、このころになると芸能人の不倫などのゴシップネタでお茶を濁すのだった。 東京大学の文Ⅲを卒業後、FACES編集部に配属されて6年。徹夜の張り込み、芸能人のゴシップを根掘り葉掘り探し出す毎日に神経がささくれ立つ毎日だ。恵だって入社時は、文芸書編集希望だった。写真週刊誌編集部では、余りに空気が違い過ぎる。週刊誌ジャーナリズムと言ったら、昔はトップ屋と言われヤクザな商売だ。所詮は切った張った、抜いた抜かれたの殺伐とした世界だ。文芸書の書籍編集とは余りに違い過ぎる。だからある者は部署替えを上司に直訴し、ある者は会社を去って行った。恵もそうしたかったか、直属の上司に諭されて6年も在籍することになった。廃刊が決まり、これで元々の希望部署に戻れると思った恵だったのだが、結局のところそれも断り、馴染んだ世界に転職を図ることになる。彼女の心の中に何が起こったのか、何故困難な道を選ぶのか、生きる上で仕事と何かを考えさせられる。

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