
転び者 新・古着屋総兵衛
新・古着屋総兵衛第六巻
新潮文庫 新潮文庫
佐伯 泰英
2013年6月30日
新潮社
781円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
五十八門の大砲を搭載する薩摩藩の新・十文字船団七隻は大隅海峡にて、大黒屋の交易船イマサカ号・大黒丸の通過を虎視眈々と待ち受けていた。一方、総兵衛一行は伊勢から京都への道程に神君の故事にあやかって、伊賀加太峠越えを選んだ。それは一行を付け狙う薩摩の刺客の他に忍び崩れの山賊たちが盤踞する危険な道だった。そして、陰吉が消えた……。緊張迸る二つの決戦、激闘の第六巻。
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(無題)
新・古着屋総兵衛の1番の面白さは、鎖国政策の江戸時代にあって、海外雄飛を実現する物語の破天荒さにあります。ですから、この巻でも胸踊るのは、冒頭の薩摩藩との海戦のくだりです。五十八門の大砲を搭載する薩摩藩の新・十文字船団七隻は大隅海峡にて、大黒屋の交易船イマサカ号・大黒丸の通過を虎視眈々と待ち受けていました。薩摩藩の大黒屋に対する恨みは百年も前の海戦の敗北に端を発します。薩摩藩にとってみれば、百年前の戦いの雪辱を期すとともに、密貿易の利益を守るための実利の戦いでもあったのです。手ぐすね引いて待ち受ける薩摩の新・十文字船団に対して、総兵衛の戦略は巧妙を極めるものでした。イマサカ号・大黒丸は駿河灘から小笠原諸島まで南下しました。イマサカ号に不慣れな鳶沢一族の外洋航海と砲撃訓練のためです。そうとは知らぬ薩摩海軍は、焦らされて疑心暗鬼に陥り、別の航路をとったのではないかと、戦力を二分させる愚挙に出ます。それでなくとも彼我の戦闘能力には圧倒的な差があります。総兵衛の指示は海戦の勝利ではなく、戦闘能力の圧倒的差を思い知らせて戦闘意欲を削ぐところにありました。 一方、大黒屋百年の計の布石を打つための総兵衛一行の旅は伊勢から京への道程にありました。総兵衛は神君家康の故事にあやかって伊賀越えの険難な道を選んだのでした。東海道と違って冬の伊賀越えをあえて選ぶ旅人はいません。薩摩にとっては襲撃に絶好のチャンスです。総兵衛ここでも、家康の故事にならって、山中の野伏を見方に付ける作戦に出ます。この時活躍するのが薩摩の転び密偵・陰吉です。伊賀の柘植一族を買収してを味方につけた総兵衛一行は薩摩の襲撃を一蹴してしまいました。総兵衛に興味を持った柘植一族の長・宗部は陣屋に泊まることを勧めます。柘植宗部と総兵衛は、わずか数刻の話し合いでお互いを認め合う仲になります。そればかりか、宗部は柘植一族を総兵衛配下に置くことを願いでるのでした。二百年あまりに渡って山中で逼塞するように暮らせてきた柘植一族の未来を総兵衛の中に見出したのでした。大黒屋の奉公人は、古着商人であるとともに、武人でなければ務まりません。ましてやこれから南蛮貿易に本格的に参入するのですから、船乗りとしてのスキルも要求されます。一度海賊船が襲い掛かってくれば、戦闘要員に早変わりしなくてはなりません。そんな要求を満足する人材群は、そうそう得られるものではありません。総兵衛はこうして百年の計の一つ、人材を手中にしたのでした。 京に入った総兵衛、1番の収穫は茶屋四郎次郎清方との知遇です。茶屋家は徳川の呉服御用達商人を表の顔に京の朝廷の動きを監視する「細作」を務めてきた一族です。これで総兵衛は、人材に引き続いて強力な情報機関も手に入れました。好事魔多し、総兵衛の未来の妻・坊城桜子が薩摩にに拉致されてしまったのです。
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