異国の影
新・古着屋総兵衛第10巻
新潮文庫
佐伯泰英
2015年5月28日
新潮社
737円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
新栄橋完成に沸く大黒屋に、深浦の船隠しを監視する眼を報告してきたのはおこも姿の忠吉だった。監視小屋には、オロシャと思われる文字が記された絵図面、貨幣等が残されていた。多くの証拠を残したことに総兵衛は疑念を募らせる。一方、幕府鉄砲玉薬奉行配下が大黒屋周辺を嗅ぎ回る。正介の秘密に感づいたのか。折から信一郎率いる交易船団が一年弱の航海を終え戻ってきたが…。
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(無題)
商家奉公に相応しい行儀作法を身に付けさせる為に深浦行きを命じられた忠吉だった。その忠吉が元のおこも姿で大黒屋の裏口に立ったのだっ。風雲急を告げる予感を残したままで終わった前巻であった。今巻に至り、大黒屋の前に新手の敵が姿を現したのだった。敵の正体は、ようとして謎であるが、だいなごん改め正介の出生に関わりがあるようだ。 ところで、忠助がおこもに身をやつしてまで深浦から陸路大黒屋を訪れたのは、敵の目を欺くためであった。そう、何者かが深浦の船隠しを見張っていたのだった。見張所を探索すると、そこには明らかに見張っていた人物の身元を憶測できる遺留品が。異国の影である。報告を受けた総兵衛は、何者かの作為を感じた。スケールの大きな陰謀である。 幕府中枢に絡む情報源としてこれほど的確な人物はない。大目付・本庄義親である。情報集取に本庄の屋敷を訪ねた総兵衛であったが、本庄は御用繁多で下城していなかった。千代田のお城でも何かが起きているようだ。 総兵衛はさらに別チャンネルからの情報集取に当たった。坊城麻子・桜子母子である。西洋骨董商を営む麻子は大名家、豪商、朝廷の奥深くまで食い込んでいたのだった。坊城家の帰り道、総兵衛は火薬を使う集団に襲われた。新手の敵が出現した。そして、坊城麻子から驚くべき情報がもたらされた。
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