とわの庭
小川 糸
2020年10月29日
新潮社
1,650円(税込)
小説・エッセイ
帰って来ない母を待ち、〈とわ〉は一人で生き延びる。光に守られて、前を向く。暗い淵のなかに身を沈めて仰ぎ見る、透き通った光。「生きているって、すごいことなんだねぇ」。歌う鳥たち。草木の香り、庭に降りそそぐ陽射し。虹のように現れる、ささやかな七色の喜び。ちっぽけな私にも、未来、はあるのだ。読み終えると、あたたかな空気が流れます。本屋大賞第2位『ライオンのおやつ』に続く、待望の長編小説。
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世の中には生きること自体が辛いと感じる人がいる。その一方では、どんな不遇な人生でも生きていること自体が楽しいと言う人もいる。本編の主人公・とわ(十和子)は後者だ。とわは盲目である。人は視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚の五感で外界から情報を得ている。その内の実に87%が視覚から得られたものだという。視覚を失うのが如何にダメージが大きいかが分かる。目の見えないとわのために、母親は庭に香りのする木を植えた。その庭が、とわに安らぎを与えてくれるのだった。 香りのする木は私も好きだ。だから、我が家の庭には沈丁花、ハゴロモジャスミン、クチナシ、金木犀が植えてある。我が庭のメインである薔薇も良い香りがすることでは定評がある。その他にラベンダーやレモンバーム、ローズマリーも爽やかな香りをもたらしてくれる。おっと、横道に逸れてしまったが、私の庭ではなく、とわの庭がテーマであった。 盲目ではあるが母の愛に包まれ時間を過ごした少女時代、如何にも小川糸らしい世界が構築されている。それが一転する。母がとわを置いて家を出て行ってしまったからだ。15年後にとわは発見され、十和子としての新たな人生を歩み始める。そこには母に対する恨みつらみは全くない。生きていること自体を喜びとする十和子の生来の資質が花開く。それは、努力してできることではない。持って生まれたものだろう。生きる意味、それは決して哲学のように理屈ではなく、もっと肌感覚的にその人の周りに漂う雰囲気なのであろう。考えさせられる作品であった。
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金鯱
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