カンパニー

有明製薬に勤める青柳47歳は、社の合併に伴い自社の製品のイメージキャラクターを勤めるバレエダンサー高野の公演を成功させるため、バレエ団への出向を命じられる。公演が成功すれば取締役直属、失敗すれば戻る場所はないという事実上のリストラである。さらに期悪く、妻が出てゆく。「あなたといると腐っていく」という残酷な言葉を残して。 社からの命令は完遂する青柳は決してリストラの対象である「いくらでも代えがきく人材」ではない様に思う（完遂すらできない有象無象がどれだけいることか...）。そんな彼もバレエという新境地で好転したのは間違いない。 バレエの感覚的なところ（軸、身体の引き上げが大事）がよく記載されていると感じた「下へ向かう力と上へ向かう力を拮抗させて筋を通す（p.214）」。 「世界中の誰もが清く正しく愛に満ちているわけじゃない。そんな人ばかりだったら、ひどく退屈でつまらないわ」（p.197） 「いつだって、身体の中にリズムは響いてるんです。人生はダンス。どうせ踊るなら、楽しく踊りたい」（p.208） 「もう少し若かったら、そんな言い訳する奴はいくつであっても結局やらないんだ」（p.205） 「『何故踊る』それはすなわち『なぜ生きる』と同じ問いに思えます」（p.278） 「気づくってのは、渦の外に出るということ。自分は今、どういう状態になっているかを冷静になって考えれば、渦から出られる」（p.279） 「今こそすべて。ほしいと思ったらためらうな。」 好きです。この作品。私は誰かの対角のコマになれるだろうか。

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