デッドライン

千葉 雅也

2019年11月27日

新潮社

1,595円(税込)

小説・エッセイ

もったいない。バカじゃないのか。抱かれればいいのに。いい男に。珊瑚礁のまわりで群れをなす魚のように、導きあう男たちが夜の底をクルーズするーー。ゲイであること、思考すること、生きること。修士論文のデッドラインが迫るなか、動物になることと女性になることの線上で悩み、哲学と格闘しつつ日々を送る「僕」。気鋭の哲学者による魂を揺さぶるデビュー小説。

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(9

starstarstar
star
3.57

読みたい

11

未読

5

読書中

0

既読

69

未指定

31

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

回遊する魚たちの夢

starstarstar
star
3.5 2020年04月26日

作者の千葉雅也さんは、著名な哲学者さんなんだとか。 以前、テレビで拝見した際に感じた、その風情と、巧みな言葉選びや破綻のないロジックとの違和感の正体を紐解きたくて。 違和感は大切だから。 「哲学」には、元々憧れを伴う興味があり、反面、結局それって何?って疑問もあったので、大学院のゼミの場面や教授とのやり取りは、とても興味深く読めた。 ドゥルーズは「人間=男性」に対するマイノリティとしての「動物と女性」を提示しているとか、デリダの言葉の不純さとか… そして、哲学とは『要するに、極論なんだ』と云う主人公の言葉に納得したり。 物語は、シャッターを切るように気ままに場面が切り替わり、その断片が連なりながら進む。 マイノリティである自らの有り様や、修士論文の締め切り(デッドライン)に苦悩する主人公の感情は、それでもどこか希薄で、読み手に何ひとつ求めてないような疎外感と浮遊感がいい。 主人公は、魚のようにぐるぐると回遊するうちに、次第に円環が狭まり、爪先立ちながら、やがてデッドラインに行き当たる。 でも、それで終わりではない。 『僕は線になる。自分自身が、自分のデッドラインになるのだ。』 ほどけた円環は、しなやかな意思をもつ線になり、再び悠々と泳ぎ出す。時間でも世間でもない自分自身の事実を。欲望を。 でも、それすら、胡蝶の夢かもしれない。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください